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秘書はハードボイルド「立花隆秘書日記」佐々木千賀子 [仕事に悩み考えているときに]


「立花隆秘書日記」 佐々木千賀子著
2003年3月初版 ポプラ社

実は私は、あるとき急に秘書という業務につかなければならなくなった。
「秘書っていったい何をするんだ?」という戸惑いの真っ最中に出会ったのがこの本だ。

結果として、この本に書かれている「秘書の真髄」のようなものがわかる前に、
違う職に異動してしまった。どう考えても向いていなかった。
それでも、時間をおいて今読み返すと「ああ、あれはそういうことだったのか」ということも多い。

秘書とは、上司の仕事のサポートはもちろん、時には先回りして「多分あの人ならこうするだろう」
とか、「この資料がほしいというだろう」と常に頭を回転させておき、もしそれが空振りしても
決して落ち込んではいられない。
そんなことで落ち込んでも誰も慰めてなんてくれない。
また、大抵の忙しい上司は人に会いたがらない。
それでも、秘書が「この人には会っておくべきだ」と日ごろの上司の思考回路から、
あるいは自分で(!)判断し、面会客と画策してセッティングしてしまい、結果オーライとなること
もあれば、こっぴどく叱られて、面会客に迷惑をかけ頭を下げることもある。
それでも誰も可愛そうにとは思ってくれない。秘書とはそんな仕事であった。

そして、それらのことがこの本にも「良い面から」描かれている。

この本をまずお薦めするのは、今秘書をされていて、やや悩んでいる方や、これから秘書をやれ、
と命じられて困っている方だ。ただ、仕事に実際役立つまで消化するには少し時間が
かかるかもしれない。あまり即効性はないが、きっと後日のあなたのためにはなる。
また、やや変わり者である上司のアシスタントをされ、きりきり舞いしている方へも薦めたい。

次には、編集者として気難しい作家の方を担当しなければならなくなった方。
その作家氏なりの対応がすでに先輩から伝授されているとは思うが、
一例として役に立つに違いない。

さらには立花氏という知の巨人といわれる作家がどんな日々、仕事の仕方をするのかとか、
その交友関係、著者が在任していたときに起こった事件にどのように対応したのか、
ということを知りたい方にも十分楽しめるだろう。
その事件の中には、田中角栄氏の死去、サリン事件、武満徹氏の死去なども含まれる。
立花氏の仕事の仕方、姿勢、資料の山の様子などもこのようにリアルに知ることは
秘書という近い他人からみたからこそわかりやすいとも言える。
どのようにしてジブリアニメ「耳をすませば」に立花氏が声優として参加することになったか
などの経緯も書かれていて興味深い。

著者はそれ以前、小松左京氏の秘書を経験しているが、40歳を超えて解雇され、
立花氏の秘書の職を500人の応募を切り抜けて得た人である。
しかし、5年後、やはり立花氏からある日解雇され、ジブリ関係の仕事をした後、沖縄に移住し、
映像・執筆関係の仕事をしていると記されている。
立花氏の秘書時代に東大で学生が行っていた、いろいろな人が20歳の頃どうしていたかをインタビューする作業をサポートをしていた経験を参考に、2004年には琉球大学でも非常勤講師として
職業と人生をテーマにした講義をされ、同じような試みの指導をされていたようだ。
そのたくましさにも敬服したい。

やはり、女はいくつになってもたくましく生きることが運命なのかもしれない。

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※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。

立花隆秘書日記

立花隆秘書日記

  • 作者: 佐々木 千賀子
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2003/03
  • メディア: 単行本


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