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運命を信じますか?  「リセット」 北村薫 [思いきり泣きたいときに]


「リセット」 北村薫 2001年1月初版 新潮社

以前、このブログでご紹介した「スキップ」とともに、北村氏の「時と人」三部作の
最後の作品である。

この物語は、第2次世界大戦のまさに開戦の年に始まる。
神戸の芦屋に住む、戦前は暮らしに困ることも無い主人公の女性、真澄は
やはりお嬢様の友人のいとこである修一と何度か出会い、一冊の本を貸し借りし、
そのことを通してお互いを思う淡い思いに気がつく。
しかし、学徒動員で学生達が働いていた工場が爆撃され・・・。

そこから、運命の輪廻が回り始める。
キーになるのは、獅子座流星群、一冊の本、啄木の詩、そして古い映画のタイトルソング。
真澄と、修一はその後十数年を経て、決してありえないかたちで再会する。
それはあまりに哀しい再会であり、結ばれるはずもない二人でしかなかった。

そして、さらに数十年。魂は運命の糸をたどり、行き着くべき場所へと導かれていく・・・。

あまり内容を書いてしまうと、この手の作品はお読みになるときにもったいないので、
紹介はこのあたりまでに・・・。
ただ、最近流行った、一時時間を遡ったり、生き返ったりするような何作かの小説以前に
この作品があり、それらの小説を否定するものではないが、それらには届くことのない高みを
最後に見せてくれる作品であることを記しておきたい。
戦時中の歴史と事実の悲しみを感じ、また一方、昭和30年代の子供達のいきいきとした
姿を知ることもできる。

この作品では、獅子座流星群が重要な位置を占めるのだが、獅子座流星群とはなんだろう。
毎年11月17、18日頃にテンペル・タットル彗星から放出された「ちり」に地球の大気が
ぶつかって見られる発光の様子が、便宜上獅子座の方向に見られるために獅子座流星群、
と言われているそうだ。
そのテンペル・タットル彗星は太陽を33年周期で回っているのだが、その33年程度に一度、
かなり地球の軌道に近づくことがあり、その時に大規模な流星を見ることが多いらしい。
ただ、これも地域(ちょうど大出現する時間に夜である国でしか見えないし、曇っていても見られ
ない)によったり、1年ずれたりするようである。
直近では1998年に出現、といわれていながら、結局は1999年にヨーロッパで大出現した
ということもある。

この33年という周期はこの作品の重要な鍵にもなる。
星の軌道が繰り返して回転していくように、地球が日々自転しているように、
運命は廻り行くのだろうか?
そんなことを宇宙をゆるやかに流れる時を思いながら、ふと短い人生を考え、切なくなる。

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※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。

リセット

リセット

  • 作者: 北村 薫
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2003/06
  • メディア: 文庫


リセット

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  • 作者: 北村 薫
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2001/01
  • メディア: 単行本


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