倫理と生き方とは?「ゲド戦記Ⅰ影との戦い」 [ゲド戦記]
「ゲド戦記Ⅰ影との戦い」 ル・グウィン 清水真砂子訳
岩波書店 1976年翻訳(写真は「物語コレクション1999年発行)
この作品は、アースシーといういくつもの島々からなる世界の小さな小島に生まれた少年が、
魔法使いとして成長し、最初の大きな試練を乗り越えるまでの物語である。
少年の名前は、少年期はダニーといわれ、その後ハイタカと呼ばれるようになる。
名付け親と自分、そして、本当に信頼する人にしか告げてはいけない「本当の名前」が「ゲド」だ。
この物語の世界では、「ものの本当の名前」というものが大変重要な意味を持つ。
「本当の名前」とは、そのものの本質であり、それを知ることは魔法使いが力を活かすために
不可欠なことなのだ。
ただ、ゲドを正しく導こうとする指導者たちは、その力が世界の均衡を崩す恐ろしい力をも
持っていることをゲドに何度となく伝えようとする。
さらに、「聞こうとするならば黙っていなければ」と学ぶ姿勢の大切さ、観察することの重要さを
教えようとする。
しかし、簡単にそれを受け入れられず、自分の力を試そうとするのが少年だ。
その秘めている力が強ければ強いほどその誘惑に打ち勝つことは難しいだろう。
大きな力に伴う正と邪、その邪の恐ろしさにゲドはまだ気が付かなかった。
指導者達の声に耳を傾けていなかったのである。
ゲドは自分の力の強さのあまり、様々な策略により、自ら闇の世界から「影」を呼び出してしまう。
それによって受けた心身の傷の大きさ、失ったものの大きさ、常に付きまとう不安に
ゲドはさいなまれる。
しかし、その「影」と向き合い、戦うのは自分自身でしかできないことだった。
この「影」とはどんな存在なのか。影とゲドとの戦いは、私達の日々の戦いに他ならない。
少年・少女たちだけではなく、大人の私達にもその生き方を問う内容になっている。
この作品は全4巻である。今後のゲドの成長とともに、物語とその中にある真実を読み解いていきたい。
<Amazon.co.jp へのリンク>
※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。
コメント 0