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最近読んだ本 [ちょっとだけ、ひと休み]

当ブックカフェに置くのはどうしようかな、と悩むところですが、
一応私の読書記録として残してみようかと思います。
ファンの方の中には憤慨する方もいるかもしれませんが、あくまで個人的感想ですので
かんべんしてくださいね。

「ニート」
絲山秋子 2005年10月初版 角川書店

5編の作品から構成されている短編集。
これは、はっきりと好みの別れるところだと思う。
さらに、5つの作品の中にも、根底は同じかも知れないけれど、表現の違いのブレが大きく、
まるで別の作家が書いているような感さえある。
いずれにしても、最後の章は食前・食後にはお読みにならないことをおすすめする。

「疾走」
重松清 2003年8月初版 角川書店

重松氏の小説を読むのは実はこれが初めてだ。
「ニッポンの課長」など、レポートモノから変な入り方をしてしまった私は、この作品については
内容自体、少々暴力的なシーンが多く、あまりなじめない。

ただ、最後に誰の視点で語られていたのか、ということがわかったとき、この作家が特別な手法を
持っていることを知った。
さらに、地方での旧住民・新住民の対立、そして陰湿ないじめ、家庭が崩壊していく様の
表現はさすがだ、といわざるを得ない。

ただやはり、あまりに人間に対する信頼を端から黒く塗りつぶしていくような内容には
やり切れなかった。
しかも、人とのつながりをあれだけ求めていた少年がたどりついた最後があの様では・・・・。

私が甘いのかも知れない。もっと、社会は汚れていて、恐ろしくて、罠だらけで、すぐ人は殺されて、
すぐ殺してしまうような世の中なのかもしれない。
登場人物すべてが中途半端な存在だ。引き寄せておいて、守りたいものを守りきれない。
かえって、崖の縁に立たせようとする。
「運命」と「宿命」ということばが出てくるのだが、著者は結局他者の力、そして人の力の
限界を訴えたいのだろうか?

最後にわずかな希望が見られるのが救いではある。
しかし、聖書まで持ち出しておいて、あのような展開にしたのはなぜなのか。
作家でありながら、言葉を否定するような表現を並べたのはなぜなのか。
ものには名前があり、人と世の中を結ぶために言葉がある。
それが心と命の次に大切なことだということこそ、今、大きな声で叫ばねばならないのでは
ないのか、と。


「林の中の家」
仁木悦子 1979年 講談社文庫

一度読んだのにすっかり犯人を忘れていた。
おかげで楽しく読むことができたけれど、最後に犯人が当たったのはうろ覚えのせいなのか、
推理力のせいなのか。面白い本ではあるが、仁木氏は紹介したばかりなので。

先日「猫はしっていた」でご紹介した仁木悦子氏の兄妹コンビの推理作品第2弾だ。
こちらは、前回よりもさらに人間関係が複雑だ。それこそ関係図でも書かないとついていけない。
このへんが海外、特にイギリスのミステリーに似ている、と苦笑いだ。

そういえば、先日私が自分の蔵書がみつからず、やむを得ず「猫・・・」を図書館から借りたときに、
なんと中表紙に人間関係図やらコメントやらが書いてあった。
ああいうことは特に推理小説にとっては命取りだ。
本が好きな人なら絶対やらないはずなのに、と悲しく思った。

・・・とこんなことを書いていたら、偶然実家の母から電話がかかってきた。
捨てるはずも、売るはずもない本が、どうしても見つからず、もんもんとしていた。
まだあるはずだ、と先日実家の母に捜索を頼んでおいたのだ。

実家の倉庫から仁木氏やクリスティーなどを含む文庫のダンボールが3箱出てきたという。
これで過去読んだ本のうち、厳選された作品と再会できるかと思うと、小躍りのひとつもしたくなる
というものだ。
小躍りしながらも、既に我が家に築かれている、あの本の山とどう折り合いをつけるかを
考えねばならない・・・。

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※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。

疾走 上

疾走 上

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2005/05/25
  • メディア: 文庫


疾走 下

疾走 下

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2005/05/25
  • メディア: 文庫


林の中の家

林の中の家

  • 作者: 仁木 悦子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1978/09
  • メディア: 文庫


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コメント 4

武田のおじさん

紹介の本とは違いますが、「6人目のさや子」の番外編が入った「図書館の海」
を本屋で見つけ、ここで紹介された内容を思い浮かべながら立ち読みをしました。本編をよんでいないので「ふ~ん」ってな感じだったけど、ニライカナイ店主さんが、疑問を呈した部分の答えがあるのだろうか?という感じで読みました。
でも、やっぱり本編を読まないとね~。(笑)
by 武田のおじさん (2006-02-21 13:53) 

ニライカナイ店主

武田さんへ>
コメントありがとうございます。「図書館の海」は見かけたことはあるのですが、
まだ読んでいません。今度読んでみますね。情報ありがとうございます!
by ニライカナイ店主 (2006-02-21 22:00) 

こんにちわ。
重松 清さんの本って、読みながら色んな事を
考えられる(考えさせられる?)ので好きなのですが
「疾走」は表紙が怖すぎて(笑)手を伸ばして無いんですよね。
記事を読ませていただく限りでは、読み手の好みに
かなり左右されてしまいそうなイメージを持ちました。。。
by (2006-02-22 22:40) 

ニライカナイ店主

norizo!さんへ>
ナイスとご来店、ありがとうございます。
重松さんは、多分いろんな引き出しを持っている方なんでしょうね。
立ち読みした限りでは、この作品意外に、もっとやさしい雰囲気の作品を
たくさん書いてらっしゃるようですね。確かに、この表紙は怖いですが、
主人公の心の叫びをよく表している、と読後には思いました。
というわけで、そういうところまで飲み込む覚悟をある程度持ってならば、
この本は印象の強い1冊になるのだと思います。
脅すわけではないんですけどね(笑)。
by ニライカナイ店主 (2006-02-23 10:30) 

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