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神様と数学の関係?「世にも美しい数学入門」藤原正彦・小川洋子 [エッセイやマンガでリラックスしたいときに]


「世にも美しい数学入門」藤原正彦 小川洋子 2005年初版 筑摩書房

以前読んだ「博士の愛した数式」(http://blog.so-net.ne.jp/bookcafe-niraikanai/2006-01-22
の著者である小川洋子氏と、その際、数学についてアドバイスをした現御茶の水女子大理学部
教授であり、エッセイストでもある藤原正彦氏の対談形式で話は続いていく。

これを読んで、前作に出てくる数式がよくわかったものもあれば、
「わからない」ということがわかったものもある(笑)。

また、藤原氏が新田次郎氏と藤原てい氏の息子さんであることも
恥ずかしながら初めて知った。だからエッセイもすらすらかけてしまう数学者なわけで・・・。
それでも、父との子供時代のやりとりの中で、将来数学者となる素養の片鱗を
思わせるシーンも出てくる。

また、ヨーロッパ圏とアジア圏の数学的ものの考え方の違いとか、フェルマー予想の
証明に実は日本人二人の予想が大きく寄与していたことなど、今まで考えても
見なかった方面、知らなかったことが楽しい対談の中に出てくる。

「博士の愛した数式」の中では、オイラーの公式が大変重要な位置を占めていたと思う。
虚数ⅰ、自然対数(ここからして私はおののくが)eは、それぞれが単独であると
非常に孤独で理解されにくい素質をそもそも持っているらしい。
しかし、eをⅰπ乗したものが、-1という自然界には存在しない数になる、という
オイラーの公式によって、一つの大きな意味をもつ。
それはそれぞれ単独では孤独なものたちが手をつなぐことによって、
美しい意味を持ったことを示している。

小川氏は、28が完全数だと知った時、阪神にいた時代の江夏の背番号だと気づいて、
これで書ける、と確信したと言っている。
しかし、私はそれよりもオイラーの公式があの小説の中でいったいどういう意味をもったのか、
ということの方が、この入門書に名を借りた対談集で得た最も美しい発見であった。

対談形式であるので、さらっと読めてしまう。ぜひ皆さんも手にしていただきたい。
数学にアレルギーのある私が読んで楽しめたのだから、大丈夫。
特に、「博士の愛した数式」で、やや不明な点(特に数学的な面で)が残った方は
ぜひ読んでほしい。

数学者がそもそもいかに孤独であり、場合によってはある証明に一生をささげて終わっていく
こともあるなど、役に立たないけれど美しく後に有用なもののために魂を捧げている多くの人々
の姿が心にしみた一冊でもあった。

最後に、小川氏が「神様の手帳(何もかも真実が書かれているようなもの)を覗けるとしたら?」
という質問を藤原氏に投げかけている。結構いろいろ見たいらしい。
藤原氏も今、多くの美しい謎を追いかけているのだろう。

<Amazon.co.jp へのリンク>
※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。

世にも美しい数学入門

世にも美しい数学入門

  • 作者: 藤原 正彦, 小川 洋子
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2005/04/06
  • メディア: 新書


nice!(5)  コメント(14) 
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コメント 14

くっしー

こんにちは!
「博士が愛した数式」は読んだのですが、こちらの本は新聞の書評欄(だったかな?)で見て気になっていました。でもとにかく数学の「ス」の字も嫌いな私には手が出ないや~と思ってしまったり(笑)。
小川洋子さんは岡山出身なので、ちょこちょこ地元のTVや講演会でお目にかかります。実は「博士~」まで小川さんの作品を読んだことがなくて、この作品で一気にはまってしまった感じです。
by くっしー (2006-03-19 12:22) 

ニライカナイ店主

くっしーさんへ>
ご来店、そしてちょうど100個目のナイス、ありがとうございます!
何もお出しできなくて申し訳ないので、仮想の珈琲券を一枚(笑)。
私も、小川さんの作品はデビュー作以来でした。もう少し読んでみたく
なりますね。「博士の・・・」は、小川さんにとって初めて取材した作品、
ということで、思いいれのある作品のようです。
そんなことや、あの本の中で??とさりげなく下を向いて通り過ぎたような
数式が再度わかりやすく説明してある部分もあります。
数学が苦手でも、数学者がどんなことを考えているかには興味があります
よね?そういうこととか、藤原さんの考える「美しい」あるいは「醜い」数学の
世界観というのも結構おもしろいです。
エッセイですので、「博士の・・・」が面白い!と思ったら、関連本として
読んでみて損はない本だと思います。
by ニライカナイ店主 (2006-03-19 16:21) 

くっしー

えええーー!私が100個目のnice!だったのですか?!(@@;
(スクロールして確認)うわぁ、本当だ~!!私でよろしかったのでしょうか・・・(笑)。でも仮想の珈琲券、ありがたく頂戴します(^ー^)。
エッセイは元々好きなので、今度書店で見かけたら、ちょっと手に取ってみようと思います♪
by くっしー (2006-03-19 21:16) 

ニライカナイ店主

くっしーさんへ>
そうなんですよ~いつもご来店ありがとうございます。
こんな自己満足的なブログなのに、訪れてくださる皆さんに感謝しています。
くっしーさん、大歓迎ですよ。これからも遊びに来て、本の話を中心に
カップを傾けるようなリラックスした気持ちでいろいろ話ましょうね。
by ニライカナイ店主 (2006-03-20 09:30) 

武田のおじさん

だはははっ!!101匹わんちゃん目です。
ニライカナイ店主も数学アレルギー?ほんとですか~?
記事読んでたらそんな気がしないのだけど・・・笑。
ちなみにわたしは数学ならぬ、算数アレルギーです。汗・・・。
小学生のころ、算数の授業が突然道徳の時間になったことがたびたびあって、塾には行ってなかった私はここで完全に落ちこぼれてしまいました。(笑)

なんかいつも読書とはかけはなれたコメント書いているような・・・。
みんな静かに読書している中で、全然違う事をしているクソガキみたい。(笑)
by 武田のおじさん (2006-03-20 10:28) 

玉漣。

こんばんは。
博士の愛した数式も、こちらも、気になりつつも・・・
数学にどうしてもリラックス感を見いだせない私は躊躇しておりました(^_^;)。
数学は決して嫌いではないですし、試験とか、研究とか迫った
状況でなければ数式にある種の美すら覚えるのですが(^_^;)。
まずは博士の方を読んで、それからこちらの対談を読んだ方が良さそうですね。書店でまずはドキドキしながら本に触れてみると致します♪
by 玉漣。 (2006-03-20 23:12) 

ニライカナイ店主

武田さんへ>
ははは~相変わらず武田さんの明るいセンス、大好きですよ~!
私は高校で挫折しているので、それまでの苦労が・・・という恨みが
ちょっとだけ数学にはあります。でも、「博士の・・・」とこの本を読んで、
数学の全く違う面を見た気がしました。哲学に近い、と思いましたよ。
そう思うと、やや親近感が沸いてい来るような気がします。
武田さんの明るいノリがいろんな人を救っているんですから、いいんですよ!
また遊びに来てください!
近々、面白い笑える本を載せる予定です。お楽しみに。
by ニライカナイ店主 (2006-03-21 12:29) 

ニライカナイ店主

玉漣さんへ>
まさにその通りです。「博士の・・・」には、試験も研究もありませんよ。
静かな世界です。ただ、数式が出てきて、それが理解できたほうが
より深く読めたんだ、ということが今回紹介した本でわかった次第です。
式自体が理解できなくても、それを構成しているものや、それらが組み合わさったことによる意味、みたいなものをなんとなくでも感じることができれはOKなんです。私は本分にも書いたように、オイラーの公式がどうしても理解できなくて、なんであれが「博士の・・・」の中でそんなに重要なのかわからず、この本によってわかったときは小躍り状態でした。というわけで、ぜひ手に取ってみてください。もちろん、順番は玉漣のおっしゃるとおりの順番で。
by ニライカナイ店主 (2006-03-21 12:34) 

YumYum

こんにちは。
数学アレルギーの方、けっこういらっしゃるんですね。私は異端児なのでしょうか、数学が大好きです。成績はそれほど良くはなかったですけどね。
でも、マッチ棒のパズルなんかも幾何学の一種ですし、そう考えると意外と好きな部分もあるんじゃありませんか。
フェルマーの最終定理は1989年製作TV版『スタートレック』の中でピカード艦長がいまだに解けていない定理として紹介する場面が印象的ですが、設定年は2360年代なので、なんと700年経っても解けていない設定だったんですね。
by YumYum (2006-03-21 21:00) 

ニライカナイ店主

YumYumさんへ>
ナイス&ご来店、ありがとうございます。
フェルマー予想とスタートレックの話、ちょっとしたトリビアですね。
この本の中で、日本人二人がこの証明に大きく寄与した経緯が書いてあるのですが、結構悲劇的なところもあって、数学者の悲哀を感じました。
数学って、幾何と代数に無理やり分けられている、と書いてありましたが
結局は論理の問題なんでしょうかねえ?
私の場合、アレルギーというよりも、高校時代に挫折したトラウマかも・・・。
by ニライカナイ店主 (2006-03-22 02:17) 

pipo

はじめまして。
夫の、というか、共同のブログ(うちのパンキョー。)へお越し下さってありがとうございました。

「博士〜」は、やはり数学的に「はて?」と思うところがありまして。
しかたなく先に読んだ夫に「わからん」と申告して教えてもらった部分も…。
こちらの本は、書店で気になってはいたのです。が、読み通す自信がなかったのです。
数学に関して、私は自分が全く信用できないので。
でも、ニライカナイ店主さんの記事で、ますます興味がわきました。
なにせ、「オイラーの公式」の謎を解かないといけないので。近々チャレンジしてみます。
by pipo (2006-03-23 18:47) 

ニライカナイ店主

pipoさんへ>
ナイス&初のご来店、ありがとうございます!
そうなんです、私もオイラーの公式自体の存在はわかっても、
それがあの物語の中でなぜそんなに重要な意味をもつのか、
実は?だったのです。なぜ、あの時博士がオイラーの公式を持ち出して
激昂したのか。
それが、この本でなんとなくわかったような気がしました。
対談なので、ふーん、と思いながら読み進むことができますよ。
by ニライカナイ店主 (2006-03-24 00:40) 

[オバケ]

 ≪…-1という自然界には存在しない数になる、という
オイラーの公式によって、一つの大きな意味をもつ。 …≫を、
〔オバケ〕の『( わけのわかる ちゃん)(まとめ ちゃん) (わけのわからん ちゃん)(かど ちゃん)(ぐるぐる ちゃん)(つながり ちゃん)』で≪…数学にアレルギーのある私が読んで楽しめた…≫となるかも知れない。

[オバケ]は、
  ちいさな駅美術館 Ponte del Sogno (JR 藤並駅) に 
令和二年一月七日~令和二年一月二十四日
   やって来る。 

by [オバケ] (2019-12-31 05:57) 

絵本のまち有田川

 自然数は、[絵本]「もろはのつるぎ」で・・・
by 絵本のまち有田川 (2020-01-15 04:02) 

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