最近&ちょっと前に読んだ本 [ちょっとだけ、ひと休み]
「探偵ガリレオ」東野圭吾
2002年 文春文庫
湯川助教授と草薙刑事コンビの始めてのシリーズだ。
作品はいくつかの短編からなるが、いずれも化学・科学を用いたトリックを
湯川助教授が淡々とヒントを出して解いていく。
この淡々とした感じ。
ものたりないような、その少なさが乾いていていいような。
二人は同じ大学で、かたや物理学、かたや社会学の専攻だ。
共通項はなんとバドミントン部。結構平和的なつながりである。
現実的なありがちな設定とありえないトリック。そのギャップがいいのだろうか。
印象的なトリックは池で金属のデスマスクが発見される「転写る」(うつる)。
さらに、海で火柱があがり女性が殺される「爆ぜる」(はぜる)。
いずれも、湯川のヒントで解決される。
草薙刑事、もっとがんばれ、という感じ。
湯川助教授のモデルは佐野史郎氏だという。
でも、湯川助教授のようにインスタントコーヒーで満足しないように思えるんだが。
佐野史郎は。
「袋小路の男」 絲山秋子 講談社
大昔に図書館にリクエストしていたこの本が今日私の番になった。
前作(ニート)のこともあり、読もうかどうか悩んだが、とりあえず借りて、
図書館でそのまま読み始めた。
3編の短編から構成されている。
1編目が表題の作品、2編目は1編目がある女性から見た男性の姿なのに対し、
その男性から見たその女性のことを語っている、ようだ。
この2編は、やはりちょっとどうなのだろう、こういう人たちは最近多いのだろうか、と思いつつ、
あっという間に読んでしまった。(タイトルの作品でなんとか賞を取りましたね・・・むむ)
ただ、3編目の「アーリオ オーリオ」という作品は、面白かった。
こういう作品だけを書く人ならもっと読むのに・・・と思う。
地方公務員の男性とその姪の話である。
二人は池袋のサンシャインにあるプラネタリウムをいっしょに見て、その後、
星のことや姪の飼い始めた犬のことなどについて、文通を始める。
その姪の父であるところの主人公の男性の兄と、主人公の関係がさりげなく表現される。
その文通はとても楽しいものだったのだが・・・という話。
絲山氏の中に、どうしてこんなに異なる世界があるのか、
そしてどうしてそれらが同じ人間の中でバランスを取っているのか、大変不思議に思う。
いつか、3編目だけのような作品集または作品を書いてはくれないのだろうか?
「恋愛について、話しました。」 岡本敏子×よしもとばなな
イーストプレス 2005初版
岡本太郎の秘書として、彼の様々な創作活動、執筆活動を共にいてサポートしてきた
岡本敏子氏と、作家でお子さんも産まれたよしもとばなな氏の対談集である。
岡本氏の既成の枠にとらわれない考え方は、恋愛だけにとどまらず、本当にのびのびと
言葉が広がっている。
たとえば、「人は、見た目がすべて」(おお、ここで既に取り上げられている!)というテーマでは、
ある政治家をさして、「顔をやめてもらいたい。政治家はやってもいいけど。」という痛快な言葉を
発している。
もともと「かっこいいとは?」ということを話しているうちにテーマが裏返った形なのだが、
要は格好いい人はそれが表に出るし、ねたみやその人の人生が見た目に出る、
という話なのである。
この対談集は主に敏子氏がしゃべり、ばなな氏は聞き手にまわっている。
ただ、敏子氏もばなな氏の作品に登場する枠にとらわれない人物たちに共感をもっていて、
それがこの対談を支えているともいえる。
おそらく、二人の表現の手法は違っても、同じようなベースがあるのだろう。
「日本は恋愛をしづらい国?」 うーん、そうなのかもしれない。
それに対してフランスやイタリアの恋愛も語られるが、決してこちらばかりを肯定している
わけではないのだが・・・。
要は、二人とも「枠」を意識しての発言なのだと思う。
日本には本当に多くの枠がある。それが昔は多くが機能してきたが、
今はそれが邪魔をしている・・・と私は彼女達の対談を読んでふと思った。
対談は2004年11月に行われているが、その編集中に岡本氏は亡くなった。
彼女は、本書の冒頭にこのことばを残している。
「賭けなきゃ。自分を投げ出さなきゃ、恋愛なんて始まらないじゃない。」
そんな恋愛、していますか?
<Amazon.co.jp へのリンク>
※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。
こんにちわ。
湯川シリーズの1作め、読まれたのですね♪
最初は安楽椅子探偵なのかな?と思って読み始めましたが
意外と行動的な湯川助教授が面白かったです。
「袋小路の男」も気になっていたのですが
クセが強そうだったので読むのを回避してました。
by (2006-03-31 07:33)
norizo!さんへ>
ナイス&ご来店ありがとうございます。
「袋・・・」は個人的には図書館で読みきるのが得策かと思います。
最後の作品はいい作品なんで惜しいです。
湯川シリーズ、これでいいのか、と思うほど、刑事さんが楽しています・・・。
by ニライカナイ店主 (2006-04-02 10:33)
「ガリレオ」は私も昔読みました。この二人の会話が軽妙でおもしろいんですよね。
東野作品の中でもお気に入りの部類に入る一作です。
トリックは「本当に実現出来るのか?」と疑ってしまったりしてますが…。
2作目の「予知夢」も相変わらず面白いですよ。
by (2006-04-23 18:36)