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星を見上げて 「詩集 カノープス―宮古島にて」 [思いきり泣きたいときに]


「詩集 カノープス―宮古島にて」 
村尾イミ子 土曜美術出版販売 2001年初版

ニライカナイへの中継地のような島に居たとき、この本とたまたま出会った。
ある方の家の本棚に、そっと置かれていた本だ。

この作品は、作者が書き溜めてきた詩集であるとともに、
医者である夫を追って宮古島に移住し、
夫と共に宮古島や沖縄の離島の島々を訪ねたことを詩にしている。

彼女の夫は、慶応病院、日野市立総合病院を経て、
宮古島にある最南端のハンセン病療養所である南静園での医療を担当、
その後は宮古の老人ホームで医療に携わっていた。

夫婦2人のおだやかな「竜宮城」での生活。
しかし、それは長くは続かなかった。

夫が病に倒れ、「21世紀の空気をほんのちょっぴりすいこんだだけで」天に召されてしまう。
その喪失感は、おそらく、「竜宮城」であったからこそ、重く、暗いものだったに違いない。
自分にとって、まだ縁の薄かった場所で最愛の人を亡くす、
ということがいったいどんなことなのか。
その気持ちを思うだけで胸が張り裂けそうになる。

4部構成のうち、最初の2部は宮古島、そして他の離島を訪れたときのことが、
第3部では夫を失った深い痛みが、第4部では夫が宮古地区の医師会だよりや
慶応病院の学部新聞(平成5年)に寄せた原稿などが掲載されている。

カメラが好きで、植物が好きで、何より星が好きだった夫。

その夫が、本土や沖縄本島では地平に隠れて見えにくい「りゅうこつ座」の一等星、
「カノープス」が宮古島で見られることをどれだけ喜んでいたか・・・。
それが、この作品にそのままタイトルとして付けられている。

宮古島でカノープスを見つける方法。
11月から2月上旬に、オリオン座のペテルギウス、こいぬ座のプロキオン、
大いぬ座のシリウスが作り出す「冬の大三角形」(逆三角形になる)の上辺の真ん中を
シリウスにまっすぐ下ろしたところ、地平から11度、そして地平線にこぶしひとつ分上のあたりに
見つかるのだと夫は説明したという。

作者は、お子さんもいるとのことで、東京に戻っていらっしゃるようだが、
きっと時々は宮古島を訪れているのだろう。
夫の愛した自然、そして「カノープス」をみつめるために。

<Amazon.co.jp へのリンク>
※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。

詩集 カノープス―宮古島にて

詩集 カノープス―宮古島にて

  • 作者: 村尾 イミ子
  • 出版社/メーカー: 土曜美術社出版販売
  • 発売日: 2001/10
  • メディア: 単行本


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コメント 2

武田のおじさん

ご無沙汰しております。わたしも星空が大好きですが、いままで天の川は一度しか見た事がありません。
天体望遠鏡も持っていますが、火星や木星あたりが辛うじて小さく模様が確認出来る程度の安物です。
反射望遠鏡なので、写真撮影には向きません。
天体撮影にはどえらいコストがかかるので今は断念しています。
知らない土地で最愛の人を亡くすのはどれ程心細い事だったでしょう。
しかし、離れ島の住民はこころ温かな人が多いと聞きます。
きっと、そんな人たちに支えてもらったと思いたいですね。
by 武田のおじさん (2006-05-04 07:39) 

ニライカナイ店主

武田さんへ>
ナイス&ご来店ありがとうございます。
私も星を見るのはすきなのですが、この星のことは初めて知りました。
沖縄では一部ある季節に南十字星が見られるとか、そういうことは知っていましたが・・・。天の川も小浜島でちらりと見たことがあります。地元の人に
教えてもらわないと、雲か天の川がわからないのが情けない。
この方自身はあとから宮古に行ったので、やはりそこに残るには短すぎて、
辛すぎたんでしょうね。ただ、もちろん、宮古にはいまでも多くの友人がいて、
時々おとずれていることが書いてありました。
特に、体や心に辛い思いを持つ人たちの施設で働いていたご主人のこと、
きっと周りの方も尊敬していたことだろうと思います。
私もまたいつか、この星を見つけに宮古を訪れてみたいと思います。
by ニライカナイ店主 (2006-05-04 13:57) 

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