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ミコが残したものとは「若きいのちの日記―愛と死の記録」大島みち子 [人生や物事について考えたいときに]


「若きいのちの日記―愛と死の記録」 大島みち子 1969年初版 大和出版

今まで、河野実さんとの共著
「愛と死をみつめて」(http://blog.so-net.ne.jp/bookcafe-niraikanai/2006-03-07)、
河野さんの気持ちを書いた「愛と死を見つめて 終章 もうひとりのミコ」
http://blog.so-net.ne.jp/bookcafe-niraikanai/2006-03-17)と読んできたのだが、
ずっとみち子さんの日記そのものを読みたいと思っていた。
それがこの記録である。

みち子さんは、若くして「軟骨肉腫」という難病に冒され、その闘病の中で河野氏とめぐり合い、
人を愛することを知る。

もともとしっかりした、進歩的な勝気な女性ではあったが、彼との愛を知り、病と闘う中で、
本当の人間としてのやさしさや生きるということについて、われわれに語りかけてくれている。

もちろんそれは彼女にとって、自分自身との対話である日記という記録の中での話なのだが、
今の私達にとって、生きることの苦しさ、いとおしさ、そして彼女が乗り越えてなお恐れた
死に対する思いを追体験することにもなる。

この日記の中には、大切なことばがいくつも残されている。
病に倒れ、自分のこれからが全くの暗闇であるという状況におかれ、
何か心の支えを渇望する気持ちが強烈なまでにそこには描かれている。

そしていつしか家族の愛や愛する人の思いや、おなじように病と闘った人の本、
そして社会奉仕活動によって徐々に、静かに彼女の心を支えでいくのである。

しかし、自分の将来を信じたい気持ちと、冷静に判断してもう無理なのだろう、という
冷めた気持ちの狭間で、恋人への気持ちが大きくゆれ、それが心を締め付けていく様が
読んでいて苦しい。
その人を大切に思う余り、自分が会いたい、独り占めしたい気持ちが強ければこそ、
恋人の将来を思い、わざと突き放す決心をする。
その場面はまさにこの女性の本質に迫るものであり、心を引き裂かれるような思いで読んだ。

この女性が社会活動や自らの強い精神力とともに、本や詩の中に心の支えを得たことは、
本を含めた文学の力であるともいえるだろう。

そういった本が、作品が、これからも多くの苦しみ悩む人の心の支えとなりつづけ、
また、そうした作品が生まれ続けることを願ってやまない。
この日記も間違いなくその1冊と呼べるだろう。

そして、私はこれからもそうした本を1冊でも多く、ここを訪れる皆さんにご紹介したい
という気持ちを再確認するのであった。

<Amazon.co.jp へのリンク>
※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。

若きいのちの日記―「愛と死をみつめて」の記録

若きいのちの日記―「愛と死をみつめて」の記録

  • 作者: 大島 みち子
  • 出版社/メーカー: 大和書房
  • 発売日: 2006/03
  • メディア: 文庫


若きいのちの日記―愛と死の記録

若きいのちの日記―愛と死の記録

  • 作者: 大島 みち子
  • 出版社/メーカー: 大和書房
  • 発売日: 2005/03
  • メディア: 単行本


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コメント 6

玉漣

こんにちは。
この本は、いろんな感情がわき上がってきて、心を激しく揺さぶりそうですね。
私はこういった本は、心が痛くなりすぎてしまうので、どうしても敬遠してしまうのですが、きっと、素晴らしい本なのでしょうね。。。

いつか、私にとって読む準備が出来たとき、手に取ってみます。
by 玉漣 (2006-05-04 17:37) 

ニライカナイ店主

玉漣さんへ>
ご来店ありがとうございます。一連の作品を読んでいると、わーっと感情が
押し寄せる瞬間もありますが、徐々に不思議と冷静な気持ちになってきます。
それは、残された記録の持つ力なんだと思います。彼らがなぜこの記録を
残し、遺族たちがなぜこれらの事実を公表しようとしたのか。それを考えると
受け止めたい、と強く思うのでした。
もちろん、人それぞれ受け止めようとする時期はあると思います。
そのときが来たら、ぜひ手に取ってみてください。
本、という伝承のあるべき意味さえも感じることと私は考えます。
by ニライカナイ店主 (2006-05-05 23:16) 

生きていく上で何が一番大切かがわかりそうな本ですね。
今すぐ読みたくなりました。
『あったかい』人になりたいです^^
by (2006-05-07 12:40) 

ニライカナイ店主

ねこばすさんへ>
ナイス&ご来店、ありがとうございます。
このシリーズの中でも、このみち子さん本人が書いたものが一番興味が
ありました。背景として、2冊読んでいるのでなおさらなのでしょうが、
いろいろな意味でこの人の強さと、やはり若い女性らしさに、心が震えました。
ただの泣ける話ではなく、一人の女性が強い気持ちをつかむまでにたどる道
として読んでみては、と思うのですが。
by ニライカナイ店主 (2006-05-07 22:41) 

mako

ミコさんの「若きいのちの日記」を、このように取り上げていただいて、心から感謝申し上げます。
 今年の8月7日が45回忌でした。ただし、正規の回忌に45回忌はありません。50回忌が回忌の最後になりますから、ぼくが元気であれば必ず行きます。ミコさんの父上は93歳でお元気です。3年前にお目にかかっています。母上は10年前に80歳で亡くなりました。
 人間は必ず死ぬ。人間だけでなく生命あるすべての生物は必ず死ぬ。夏の蝉は7日間だという。地球の生命は80億年とも言われている。
 ミコさんの21年間の命は、人間の命=生きるとはについて、多くの示唆を与えていると思います。一人1宇宙が生涯だと思います。
 生きるということは、如何に死ぬかということ。死ぬということは、如何に生きるかということ。釈迦はこれを色即是空 空即是色といった。人間の命は、はかないもの。だからこそ、懸命に生きる価値がある。
 人間の平均寿命が1000年だったら、きっと懸命に生きないと思う。
by mako (2008-09-12 23:13) 

耀

2年以上も前の記事へのコメント失礼します。
私はこの本を昨年末に購入し、読みました。何度も何度も、読み返しました。
実は私は、5年前に大切な女性を亡くしました。
ただただ、励ますことしか出来なくて・・・。辛い思いをさせたんじゃないかって・・・。
だからずっと、知りたかったんです。彼女がどんな気持ちだったのか・・・。
そんな中、「日記」を載せているこの本に出会い、少しだけでも彼女の気持ちに近づけたような、そんな事を考える助けになりました。
もっと早く知りたかったなぁ、なんて思ってしまいます。

全ては”限りある”もの
忘れないで生きてゆきたいです。

それでは、失礼します。
by 耀 (2009-01-05 17:35) 

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