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眠れぬ夜のつれづれに 「優しい音楽」瀬尾まいこ [落ち込んだときに]


「優しい音楽」 瀬尾まいこ 双葉社 2005年4月初版

この著者の作品を読むのははじめてである。
まだ若い作家ではあるが、05年、「幸福な食卓」で吉川英治文学新人賞を受賞した時に、
ちょっと気になって立ち読みしていた。
その後に出た作品、ということで今回初トライである。

この作品はもともと小ぶりな本なのだが
(「ヒストリアン」のあとなので余計にそう思うのかもしれない)、3つの短編から成っている。
本のタイトルでもある「優しい音楽」、「タイムラグ」、「がらくた効果」の3本立てである。

主人公が男性であったり、女性であったりするところがまた面白い。
どちらか一辺倒だとつまらない・・・と言っても、登場する男性の中には
少々女性的な細やかな男性もいるのではあるのだけれど。

「優しい音楽」では、設定自体にひねりがあるのだが、それがかなり初めの頃から
だいたい想像がついてしまう。
しかし、最後にもうひとひねりあるところに、この作者の力を垣間見たような気がする。

「タイムラグ」は不倫相手の子供を一晩預かる、という設定がかなり無理のあるところなのだが、
それによって色々な背景が見えてきて、さらに主人公の「人となり」も見えるところが面白い。
子供をダシに使う、という小技ではあるが、この後主人公はどうするのだろう、と思うと
想像が広がる。
かなり無理はあるが、個人的に好きな作品であった。

「最後のがらくた効果」・・・これもかなりはちゃめちゃな設定からスタートする。
おはなし、としてはわかっていても、こんなことって・・・という感じだ。
しかし、小さなファンタジーの一つ、あるいは登場する同棲カップルの女性の性格上こうなった
のだ、といわれればまあ、なんとなく、そうなのか・・・とまず受け入れられないこともない。
ただ、やはり最後にはうまくまとめてあり、こういうこともありなのかな、と
変に納得してしまうところもある。

いずれの短編も、「ちょっとありえない人間関係」をうまく描いている。
その少し無理な設定も、著者の自然な文体と展開のうまさから、そんなに嫌な感じがしないのが
不思議だ。
読後感がすっきりするのはそのためかもしれない。

ちょっと疲れた眠れない晩に、
あるいは一人で過ごす夜にハーブティーでも飲みながら
そっと開いてみるといい短編集のような気がするのである。

<Amazon.co.jp へのリンク>
※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。

優しい音楽

優しい音楽

  • 作者: 瀬尾 まいこ
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2005/04
  • メディア: 単行本


nice!(2)  コメント(6) 
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コメント 6

トム

初めて聞いた作家さんです。ヒューマンドラマ物ですね。
好きなジャンルかも、でも最近寝つきが良すぎて2~3枚進むうちに寝てて全然はかどりません。図書館で借りた本も期限内によめるかどうか・・
by トム (2006-05-06 06:58) 

こんにちは(^^)
わたし、瀬尾まいこさん大好きなんです。
瀬尾さんの本は不思議な感覚するけれど、あったかい感じになってしまいます。
「幸福な食卓」大好きです(´ー`)」
by (2006-05-06 19:02) 

ニライカナイ店主

ホシさんへ>
ナイス&ご来店ありがとうございます。
ははは・・・春眠、というには遅いんでしょうか。でも、確かによく眠れます。
友人に借りた「ダ・ヴィンチ・コード」も面白いのに、まぶたが下がる。
瀬尾さんのこの作品は短いので、良い意味ですきっと読みきれると思います。
この時期にお薦めかもしれませんね。
by ニライカナイ店主 (2006-05-06 21:10) 

ニライカナイ店主

madoccoさんへ>
ご来店ありがとうございます。確かに、不思議であとからほわ~んと
した読後感のある作家さんですね。この不思議感を言葉にするのは
難しいですね。読んだ共通体験があると「そうそう」と通じるんですが。
「幸福な食卓」もちゃんと読んでみよう、と思います。
by ニライカナイ店主 (2006-05-06 21:13) 

不思議系・・・なんですね~。
なんだか大好きになりそう^^
しかし、私は音楽もそうなんですが作家さんも
女性のものをあまり好んで聴いたり、読んだりしないんです。
単なる偏見だと思うんですが
男性が創ったものが好きなんです。
しかし、この作品は読んでみたいですね~
by (2006-05-07 12:23) 

ニライカナイ店主

ねこばすさんへ>
ナイス&ご来店ありがとうございます。
確かに、「女!」って感じが前面に出るもの、逆に「男は仕事だ!」みたいな
物も同性にとってはわかっているだけに合わないとイヤミになりがちですが、
これはそういったことがなんとなくさーっと風のように、どっちでもいいことの
ようにはなしが流れていきます。一度、試してみてはいかがでしょうか?
by ニライカナイ店主 (2006-05-07 22:33) 

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