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映画鑑賞後読みました 「間宮兄弟」 [肩の力を抜いて読書したいときに]


「間宮兄弟」 江國香織 2004年10月初版 小学館

最初に映画のほうを観てしまった。(というわけで写真は映画のパンフ)
大抵は、先に本を読んでからにするのだが、今回はタイミングもあって、映画を先に観た。
映画自体もおもしろかった。
特に破綻はなかったし、最後まで楽しんで、そしてちょっと寂しかったりこれからどうなる?と
思いつつも、あれはあれでいいんだろう、と思いながら上映室を後にした。

さて・・・。
原作を読んでみた。
江國香織氏のイメージは読書歴によってそれぞれなのだろうが、案外映画は原作に忠実であり、
原作もさらりと「兄弟」の日々を綴っていた。
「原作はもっと毒があったりして・・・」とちょっと引けていた腰は単なる杞憂に終わった。

映画、原作ともにまだ接点のない方にさらりとこの作品を説明するとすれば・・・
30を過ぎても折り合い・・・というか、おとなしめの子供のケンカのようなものはありながら、
一緒に仲良しの友人のように暮らしている兄弟の話である。

もちろん、いろいろなイベントはある。
女性に対しあきらめ気味の兄に対し、弟はまだ情熱をもっているし、それを兄に対しても
薦めようとあれこれと試みてもみる。
しかし、二人にとっての大切な価値観のレベルとしては、結婚とか、
女性とつきあうということよりももっと高い、大切なものが・・・
そう、しかも二人で共有しているものがあるらしい。

映画との比較の中でやはり気になったのは兄のほうだった。

この兄、ビール製造会社の経理又は総務のようなことをしているのだが、
映画では結構会社の中での社会性はバッチリあり、適応しているように描かれている。
ぜんぜん「変わって」いない。
(念のため。「変わっている」とはここではけなし言葉ではない)

それなのになんであんな強引な先輩に引きずられ、いつも飲みにいったり、
時には「なんでそこまで?」というプライベートなことまで手伝わされていたのか。

それは、やはり原作の中で明らかになる。
映画ではそういう場面はいまひとつ出てこないのだ。
私は映画を見る限り何故ガールフレンドの一人くらいいないのかわからないこの兄の、
それまでの経過や敬遠される理由を原作にこそ見出したわけだ。
(佐々木蔵之介だし?)
さらに、ファッションももっと原作に忠実なら・・・
映画では、ちょっと兄は通勤服がびしっと似合ってしまっているのだ。
だから、原作の微妙なアンバランスさ、奇妙さは現れていない。

母が中島みゆきだった、というのはなんだか本を読むとさらに納得がいく。
素の彼女ではなく(ご存知の方、ここで笑?)、彼女が作り出す「こんなお母さんがいたらなあ」
というイメージが、たとえば鳩居堂の「あたしがいつもつかってた便箋」などという表現から、
ははあ、こんなことをさらりと嫌味でなく言えるイメージの女優さんは確かにそうは居まい、
と思わせるのである。

さらに。
原作の中に限って何かを見出すとすれば、それはやはり「どういう生き方でもOKなのでは
ないか?」ということだ。
最近、そういう本にたまたま多く出会っているような気もするが、
それが時代のニーズなのかもしれない。

30歳過ぎて兄弟二人で楽しく暮らしていようが、母の誕生日や帰省時のルールがあろうが、
女性が苦手だけれどちょっとあきらめられなかったりしようが、誰にも迷惑などかけていない。

本人達が本当にまっとうで、楽しく豊かな日々を送っていれば、それでいいのではないか、と。
もちろん、原作ではその楽しさの影にある心の表情も描かれている。
しかし、それよりも彼らの生活を支えている楽しい決まりごとや遊び、読んでいる本、
聴いている音楽等、いずれも「ああ、わかる、わかる」とうなづかずにはいられない詳細まで
人物像を書き上げている著者には相変わらず頭が下がる。

どこかにいそうだ、間宮兄弟。

最後に・・・この作品がなんと「女性セブン」に連載されていたことを初めて知った。
実はこの本を読んでいて一番驚いたのはそのことだったかもしれない。

<Amazon.co.jp へのリンク>
※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。

間宮兄弟

間宮兄弟

  • 作者: 江國 香織
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2004/09/29
  • メディア: 単行本


nice!(6)  コメント(12) 
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コメント 12

トム

間宮兄弟、映画はまだ見ていないのですが原作の雰囲気を壊してないみたいですね、原作を先に読んでしまったのですこし不安ですが、気になる映画ではあります。
by トム (2006-06-24 09:49) 

はりなたる

こんにちは。原作は読んだのですが、映画はまだです。
でも佐々木さんファンとしては、やっぱり見たいなぁ。。。と思ってるんです(^^;)ニライカナイさんの紹介を読んで、ますます見に行きたくなりました。。。いつ行こう。。。
by はりなたる (2006-06-24 10:03) 

こんにちは(^^)
わたしは前に原作を読んで面白い!と思ったのに内容とか最後どうなったとか,あまり思い出せません 笑
弟役が塚地さんと聞いたときにはぴったりかも。。。と思いました。
わたしも観に行きたいです(^^)
by (2006-06-24 15:01) 

ニライカナイ店主

ホシさんへ>
ナイス&ご来店ありがとうございます。先に読んでから観た友人と話をすると、
かなり入れ込んで人物像を作っているとズレが出るようです。
細部は少々異なりますが、キャスティングもなかなか。原作への入れ込み度
を考えて、後悔のないよう(笑)ご判断くださいね。
by ニライカナイ店主 (2006-06-26 01:49) 

ニライカナイ店主

はりなたるさんへ>
ナイス&ご来店、ありがとうございます。佐々木さん、結構はじけてました。
原作よりやや明るめかと・・・。原作だともう少し奇妙な感じがありましたが、
映画ではお人よし度がアップしています。映像的にも笑える部分もありますし、
このコンビでよし!というところでしょうか。ぜひ観てください。
by ニライカナイ店主 (2006-06-26 01:51) 

ニライカナイ店主

madoccoさんへ>
ナイス&ご来店ありがとうございます。確かに、イベントがどうこう、というよりも
この兄弟の存在そのものがこの物語のキーなので、忘れてしまうのもしかた
ないかな(江國さん、ごめんなさい)と。確かに弟役、塚地さんしかいないか?
と思うくらいはまってました。それまでコンビの名前しか知らなかったのですが
最近TVでも気になって仕方なし、です。相方もちょい出してますのでお楽しみに!
by ニライカナイ店主 (2006-06-26 01:55) 

こんにちわ。
映画はちょっと観に行く映画が立て込んでいるので
DVDまで待ちたいところです。
原作のあの独特の雰囲気、暖かさなんかを
映画で上手く表現できるのかな?と心配してましたが
大丈夫そうで良かったです。
本ではあのくらいのメリハリでも、読者の想像力とか感じ方によって
かなり良い味の作品だと思いますが
映画(映像)にしてしまうと、ちょっと弱い感じで
退屈しちゃうかも?と言う気が少ししていたので。。。
by (2006-06-26 07:58) 

さわこ

映画見たかったけどもう終わり?
新文芸座に期待。。。
by さわこ (2006-06-26 16:56) 

歩林

映画、もう終わりですか?
白夜行、以来「読んでから観る」のほうがいいなって
思ってたんですが。

おもしろそうな話ですよね。とりあえず本にトライしよう。
それにしても、たくさんよみたい本がありすぎて
時間がないですー。
ちなみに今「神様からひと言」荻原 浩 著を読んでます。
なかなか、引き込まれます!
by 歩林 (2006-06-26 20:51) 

ニライカナイ店主

norizo!さんへ>
ナイス&ご来店ありがとうございます。ちょっとお兄ちゃんのほうは
映画のほうがかっこいいかな?と思いましたが、二人の結びつき、
それぞれの人となりはうまく表現できていたと思います。
特に、塚地さんはぴったりだったと友人とともに話しています。
by ニライカナイ店主 (2006-07-05 07:50) 

ニライカナイ店主

さわこさんへ>
ナイス&ご来店ありがとうございます。いつかどこかで見られるといいですね。
原作と通じるほんわかした雰囲気と奇妙に思えても実は誰でもが抱えている
「家族テーマ」のようなものを感じることができると思います。
by ニライカナイ店主 (2006-07-05 07:53) 

ニライカナイ店主

歩林さんへ>
ナイス&ご来店ありがとうございます。「神様からひと言」は図書館の
連絡待ちです。楽しみにしています。
確かに、できれば先に読んでおきたいですよね。自分の世界で構築できる
のは本の世界ですからね~。
by ニライカナイ店主 (2006-07-05 07:57) 

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