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最近読んだ何冊かの本 [ちょっとだけ、ひと休み]

いろいろあって、結構ばたばたしておりました。
とはいいつつ、結構本だけは読んでいたりしてまして。
店のほうが手抜きで申し訳ありません。
このところで読んでいた何冊かの本についてご紹介してみます。


「おとぎ話の忘れ物」 小川洋子・著 樋上公実子・絵 2006年4月 集英社

この物語は、絵に著者が短編をつける、というスタイルでつむがれている。

表紙からして赤頭巾を容易に連想させながら、よく見るとかなりグロテスクで、エロティックで、
しかし「きれい」なのだ。

他の絵もそうだ。
ストレートでかわいい少女の姿のように見えたかと思うと、次のページでは成熟した女性の
エロティックさとグロテスクさ、しかしそこになぜかクールであったり、哀しみであったりと、
複雑な気持ちがかもしだされている。

さて、物語自体はその絵をキーにしながら、「白鳥屋」というキャンディーの老舗で、
「忘れ物図書館」というところに案内されるところから始まる。
有名な老舗のキャンディー屋で、名物のキャンディーを買った「あなた」は、
その図書館がどうしてできたのか、という話からいずれその品物を包んでもらっている間に
「忘れ物図書館」でふしぎな物語を手にしながら待つようになるのである。

そうして、物語の幕は静かに開くのだ。不思議で、微妙な絵とともに。

「あなた」が手にすることになる4つの物語は、何らかの童話をキーにしたり、
そのものをさらに展開させたものになっている。

いずれも絵と同じように、微妙な思いで読み終わるに違いない。
哀しいような、いじわるなような、クールなような、そして美しいような。
哀しい終わりは涙をさそうよりも、より深い森へと誘うように思える作品と絵のコラボレーション。
大人の女性に何かを語りかけているような気がするのだが。

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※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。

おとぎ話の忘れ物

おとぎ話の忘れ物

  • 作者: 小川 洋子, 樋上 公実子
  • 出版社/メーカー: ホーム社
  • 発売日: 2006/04
  • メディア: 単行本



「国家の品格」 藤原正彦著 2005年11月初版 新潮新書

かなり話題になった作品である。

著者は大学の理学部教授で数学者であるが、新田次郎氏、藤原てい氏を両親に持つ。
小川洋子氏の「博士が愛した数式」で、小川氏が数学の部分について事前に話を
聞いていたのもこの藤原氏であった。

この作品はある大学の講演をもとにしておこされている文章でもあるのだが、
とにかくよく出てくる言葉は「武士道」である。
父の教え、そして新渡戸稲造の「武士道」に大変著者は影響されており、
そのことはあえて否定するまでもない。

アメリカ流の市場主義によって、「情緒と形」を忘れ、
「論理と合理」に「身を売ってしまった」日本は、「国家の品格」をなくし、
「孤高の日本」を取り戻さねばならない、と著者は述べている。

読み進めていると、やや極端かな、という気もする。
おそらく、戦前生まれの方ならもっとすんなり入っていけるだろうし、逆に若い人たちには
新鮮かもしれない。
私のように理屈で学んできた世代は最も違和感を持つのかもしれない。

確かに、出版されたタイミングでは、あまりに極端な市場の自由気ままな様子、
また、他国に振り回される政府、ということがクローズアップされており、
こうしたアンチな考え方が極端であっても皆に受け入れられたのだろう。

しかし、今おちついて読んでみるとやや「情緒的」である。
それで何がわるい、と著者に言われそうだ。
確かに、情緒は大切だ。日本人ならではの情緒は大切にしたいと思う。
しかし、それは個人の心の問題でもあるような気がするのだが。

そんな中でも、共感する部分はあった。
「最悪は『情緒力がなくて論理的な人』」
こういう付き合いきれない人はいる。周りは迷惑だが、本人は全く気がつかない。
それどころか、自分の優秀さに酔っている。
周りにいる人間の心にも配慮する「情緒」が欲しいものだ。

というわけで、読む人の年代や背景によってかなりこの本の印象は違うのではないだろうか、
というのが本音である。

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※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。

国家の品格

国家の品格

  • 作者: 藤原 正彦
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/11
  • メディア: 新書



「壊れかた指南」 筒井康隆著 2006年初版 文藝春秋

本当に久しぶりに筒井作品の新作を読んだ。(もしかしたら唯野教授以来かも・・・?)
30編の短編を集めた作品集なのだが、その中の10編は特にショートショートとして
区切られているが、だいたいの作品はあっさりとまとめられた超短編である。

中には、続くかとおもいきやいきなり終わって、あれっ?と思うものも。
きっと、読み始めたとき、これはいったい?と戸惑う方も多いだろう。
筒井氏の手管に慣れていればまあ、様子を見てみようかということになる。

これらの作品は2000年から2006年の初めまでいくつかの文芸誌に
掲載されているものなのだが、ある時代、ある一場面を極薄のスライスのように
切り取って見せ付けているような気もする。

つい深読みしてしまうのだが、あまり考えないでさらっと読み流していくと、
著者がいいたいことはもしかしてこういう事なんだろうか?という図が茫洋と見えてくる。
おそらく、著者は「時代」によって変化するもの、しないもの、
そしてある「時代」におかれた人々の姿をコラージュのように見せてくれているのだろう。

筒井氏のことだから、ただ遊んでいるだけのものもあるのかもしれないのだが。

いずれにしろ、読み終わった後からそのスライスがやたらと気になってしかたないのは
何故だろうか。
この余白がおそらく筒井マジックなのだ。
何しろ、「壊れかた指南」と宣言しているのだから。

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壊れかた指南

壊れかた指南

  • 作者: 筒井 康隆
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/04/26
  • メディア: 単行本


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