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将棋を知らない方もぜひ!「泣き虫しょったんの奇跡 サラリーマンから将棋のプロへ」 [落ち込んだときに]


「泣き虫しょったんの奇跡 サラリーマンから将棋のプロへ」 瀬川晶司
 2006年初版 講談社

詰め将棋のやさしいのをなんとか解けるかどうかの私であるが、将棋界で
「一度奨励会で年齢制限を越え、ある強さまでいかなかったら、もうプロにはなれない」
ということはなんとなく知っていた。
これは、囲碁だとまた別だ。(確か棋院がやっているプロ育成目的の会の年齢制限が違い、
プロ試験の門戸は一般にも開かれており、その年齢制限はまた異なる)

将棋の話にもどる。
ある日、何らかの報道で「アマ名人、プロへの道を切り開く」というような報道があった。

実際は2005年の11月になるのだが、なんとなくそれまでの経緯、つまりその人が
奨励会を退会して、以後サラリーマンになり、アマとしてプロをもしのぐ活躍をしていることは
なんとなく新聞等で目にしていた。

この作品は、そんな彼、瀬川氏がプロ棋士になるまでの経緯を
本人が素直な筆致で綴ったものである。
今だからこそプロとなったものの、将棋だけでなく、いろいろな面で思い出すのも辛い場面も
多々あったと思う。自分の敗因をたどるのは誰にも面白いことではない。

しかし、プロやプロに近い棋士たちは普通「感想戦」というものを行う。
一人が「負けました」「(手が)ありません」と認めた後、どこにその戦いのポイントがあったのか、
お互いの将棋の今後のために、一手目から指しなおし、ここがこうだったから、などと
勝ち負けを置いて分析し、次につなげるための作業である。

瀬川氏がこの作品を書いたのは、ある意味で自分が勝った「新たなプロ棋士への道の開拓」
という道までの感想戦を行い、今後の本当に厳しいプロ生活へと進むためだったのではないか、
と思う。

文体自体は大変読みやすい。
それは飾らず、素直に書いているということもあるだろう。
さらに、プロへの道を進むターニングポイントに、それぞれ背中を押す人物が現れている。
その人物との関係と交流、そこで自分がどう変わったのかということが描かれていて、
場面によっては読みながらぐっとくるところもある。

ただ勝ちたいがために一緒に打ち続け、アマになってからも交流のあった幼なじみ、
その幼なじみとともに奨励会の門をたたくまで力をつけてくれた将棋道場の席主
(マスターのようなもの)、奨励会や同じ門下の先輩や仲間、
さらにはプロをあきらめざるをえなくなってからは職場の同僚や上司、アマの仲間たち・・・。

なぜか、彼には多くの支えてくれる人が必要な時に現れる。
それは、「本当に将棋の神様っているんだろうか?」と思うほどである。
まさに「人との出会い」の不思議であり、おそらく人をひきつける魅力が
瀬川氏にあったということだろう。

しかし、さらに瀬川氏の人生を左右したのは、彼の可能性を引き出してくれた
小学生時代の恩師であり、常に息子達に「自分の好きな道を行け」とやさしく見守ってくれた
父なのだろう。
二人とも、とてつもなく大きなものを瀬川氏の人生そのものに与えている。
それだけに、この二人のエピソードは、それぞれ涙なしには読むことができない。

多分、瀬川氏だけではなく、実は私達もいろいろなところで自分の人生を左右する出会い、
分かれ道で進むべき道に背中を押してくれる人がいるのだろう。
それに気がついていないだけかもしれない。

そんな自分の足元をふとみつめさせてくれた一冊であった。

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※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。

泣き虫しょったんの奇跡 サラリーマンから将棋のプロへ

泣き虫しょったんの奇跡 サラリーマンから将棋のプロへ

  • 作者: 瀬川 晶司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2006/04/21
  • メディア: 単行本


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ニライカナイ店主

まるこさんへ>
初のご来店&ナイスありがとうございます!また遊びに来てくださいね。
お待ちしています!
by ニライカナイ店主 (2006-09-03 21:10) 

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