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辛さの後に見えるもの 「神様からひと言」 荻原浩 [仕事に悩み考えているときに]


「神様からひと言」 荻原浩著 光文社 2002年初版

「あの日にドライブ」
(2005年初版光文社http://blog.so-net.ne.jp/bookcafe-niraikanai/2006-04-21
でも思ったのだが、荻原氏の作品は
読み始めがどうも辛い。

きっと、これは皆同じように感じるかもしれないのだが、特にサラリーマン生活をしたことの
ある人なら、誰でもきっと感じることなのではないか、とふと思う。

今回も、泣く子もだまる大手広告会社を訳あって辞め、中堅食品メーカーに就職した主人公は
当初さんたんたる目にあう。
上司のやっかみ、組織の力関係、そして掃き溜め部署への異動。

その掃き溜め部署とは「お客様相談係」、つまり苦情処理係のようなところなのだが、
ここでもまたとんでもない上司がいて、くせのあるメンバーがそろった課のイメージも悪い。
当然のことながら。

きっと、読者の中にも苦情処理を担当したことのある方がいるかもしれない。
これは辛い仕事だ。本当にこちらのミスでなくてもとにかくあやまる。
あとは当面の問題とは関係のないことでもまず話は聞かねばならない。
そうかと思えば、場合によっては押したり引いたり、あるいははっきりと筋を通して
強気に出なければならないときもある。
自分のミスでないが、会社組織のミスを頭をこすり付けて謝らねばならないときもある。

そんなとき、当の関係部署は「あっちがわるいんだから」とどこふく風の時さえあるのだ。

この作品では、主人公は会社人生と、自分のプライベートでも情けない状況にありながら、
回りの人たちに感化され、あるいは思わぬ人に助けられながら、修羅場やら情けない日々を
送った末に自分の新たな道を見つけ出していく。
そんな「あるスタート」までの物語なのだ。

本当に辛い状況にありながら、時には仕事でもバクチを打ち、
思わず笑ってしまうようなシーンもある。
この笑いがこの作品の重さを実は支えている。

この作品で学ぶことは多い。
人を見かけで判断しない、人の話はあっと思ったらよく耳を傾けてみる、
くよくよしてもしかたないことはどこかで解消する、
そして、本当に大切な一握りのものは決して手から離さないこと。

人生は、多くのことをねだらなければ、案外シンプルなのだとわかってくる。

転職を考えている人、今転職活動中の人はもちろん、仕事に悩んでいる人、
苦しんでいる人にもぜひ読んでいただきたい。

このようにはうまくいかないかもしれない。でも、きっと何かヒントは見つかるはずだ。

<Amazon.co.jp へのリンク>
※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。

神様からひと言

神様からひと言

  • 作者: 荻原 浩
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2005/03/10
  • メディア: 文庫


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コメント 5

歩林

おもわずわらってしまう場面ありますね。
筆者の荻原さんが「仕事ごときで、死ぬな」というコメントを残されてるのを見ました。リストラや、職場のごたごたなんか小さいことだよ。っていうこと。
視点をかえる。考え方をかえるって時には大切かもしれませんね。
by 歩林 (2006-09-06 21:48) 

ニライカナイ店主

歩林さんへ>
ナイス&ご来店ありがとうございます。
何かにとらわれているときには、なかなか広い見方、いわば「広角」な見方
ができずに苦しむことも多いですよね。荻原さんのコメントや物語で視野が
急に広がったり明るくなる方もいるのでは、と思います。食べていくための
手段は何かしら手に入れないとならないので、つい大人は仕事や職場に
しがみつこうとします。それを蹴飛ばすバイタリティ、何が一番大切かを
足元から考えて、そう、ちょっと空を見上げてみるひと時が案外重要
なのかな、といつもこの著者の作品を読むと思います。
by ニライカナイ店主 (2006-09-07 10:26) 

おはなし村ゆめ

今、本当に職場のことで悩んでるので、ニライカナイ店長様のかいてくれて
ある、この記事だけでも、そうとう、救われました。
この人よりは、いいかもなあって、思えたから。
なんで、集団になると、嫌な人って出来上がるのかなあ。
どの集団にも一人はいますよね。キライな人を、キライでなくなる方法って
ないかな・・・・・
by おはなし村ゆめ (2006-09-08 01:58) 

ニライカナイ店主

おはなし村*ゆめさんへ>
ナイス&ご来店ありがとうございます。人間、どうしても集団の中で無意識に
比較しているんでしょうね。それで、最も合わない人が浮上してくるような
気もしています。できればその人には無理に近づかないのが一番と思います
が、どうしても関わらなければならなければ、「これは給料のうち」とどこかで
線を引くこともできるようになるといいですね。無理に好きにならなくても
いいと思いますよ。異動して離れてみてもやっぱりあの人は会いたくない、
という人もいれば、離れていれば大丈夫という人もいろいろです。
とにかく自分の心を守ることが一番大切です。そのためには7~8割の力で
職場で過ごしてもOKと私は思います。
by ニライカナイ店主 (2006-09-08 08:14) 

ニライカナイ店主

うっしぃさんへ>
ナイスありがとうございます。また気軽に遊びにきてくださいね。
最近バタバタして時間も不規則で、なかなかアップできないんですが・・・
by ニライカナイ店主 (2006-09-19 17:07) 

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