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今更ですが・・ 「バッテリー」 あさのあつこ [物語や絵本の世界を楽しみたいときに]


「バッテリー」 あさのあつこ著 角川文庫 2003年

おそまきながら、話題の作品を読んでみることにした。
1巻目を読み終わって、素直な感想としてこのあとを読んでみないとわからないなあ、
という気持ちとともに、この頃の年代の一人の少年、しかも特別な能力をもつ少年の内面を
ここまで丁寧に書ききっていることに話題になるに足るものを感じる。

きっと、親たちの年代は、自分達の子どもの頃を思い出すとともに、
今自分の子どもの考えていることに思いをめぐらすのかもしれない。
あるいは純粋に、内容のおもしろさを楽しむかもしれない。

私は、実は角川文庫版になったときの著者のあとがきに最も心が揺さぶられた。

何故あさの氏がこのような作品を書くにいたったのか、
なぜここまで主人公の巧や弟の青波の心を細かいところまで私達に語ろうとしているのか、
それがそのあとがきを読むと良くわかる。

あさの氏は子ども時代に抑えてこんできた何かを、その思いを、
主人公やそのほかの少年達に放ったのである。

それが本当の意味で気持ちを昇華することにつながるのかわからないながらも
その気持ちを書かずにはいられなかったのかもしれない。

さらに続いていくこの物語だが、そもそもは1996年に教育画劇という出版社から
出版されたものである。
当時の社会背景を考えるとまさにその時、この物語を書かねば、と思った
著者の気持ちがわかると共に、今この時代の中でもなお、
別の多くの問題を背景にもちながら生き生きと主人公の生き方が浮かび上がってくるのだ。

著者をして「屹立したたった一人の少年」といわしめた少年。
それがどんなに集団、社会・・・特に学校という枠の中で波紋を起こし、摩擦を起こすものか。
しかし、それをもかまわず嵐の中を一人歩いていくような・・・。

予定調和、というものを排したと著者本人が書いている時点で、
既にこの作品は児童文学の枠にはあてはまりきらないのかもしれない。

<Amazon.co.jp へのリンク>
※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。

バッテリー

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  • 作者: あさの あつこ
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2003/12
  • メディア: 文庫


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コメント 2

yworfutig

読みました。最新刊5巻まで。早く次が出ないか出ないかと、本屋に入るたびに探すほどです。
ここまで書けば、私がこの作品にどれだけ入れ込んでいるかわかっていただけるでしょうか。
ニライカナイ店主さんのおっしゃるとおり、この作品は児童文学の枠には納まりません。かといって、今の子ども達にも読んで欲しい作品ではありますが。漫画にまでなっていますが、ぜひ活字で想像力を働かせて読んで欲しいと思います。
1巻を読まれたニライカナイ店主さんにはもはやこの作品を説明する必要はないかとも思いますが、ぜひ2巻以降も読んでみることをお勧めします。巧、豪、青波だけでなく、周りを取り巻く人々の心理が巧たち同様、細かく描かれています。
なんだか、いつも紹介していただいているのに反対になってしまいましたね。
by yworfutig (2006-12-21 23:18) 

ニライカナイ店主

クレマチスさんへ>
ご来店ありがとうございます。この作品の魅力がどれだけすごいものか、
やはり多くの読んだ方の熱意を聞くたびにひしひしと伝わってきます。
私もぜひ続編を読んでいきたいと思っています。
また遊びにいらしてくださいね。
by ニライカナイ店主 (2006-12-22 17:54) 

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