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キキの大人の魔女への道「魔女の宅急便その5 魔法のとまり木」 [物語や絵本の世界を楽しみたいときに]


「魔女の宅急便その5 魔法のとまり木」 角野栄子 福音館書店 2007年

「魔女の宅急便」シリーズももう五作目である。
キキは19歳の女性として登場する。

が。

冒頭からほうきでアクロバティックな飛行を我々に披露してくれる、
相変わらずおてんばなキキである。

一方、ジジはちょっと最近変なのだ。
普通の猫のようなしぐさや鳴き方をするようになってしまう。

そんなジジのことや、遠くの学校に通っているとんぼさんとなかなか会うことも
できず、イライラしてばかりのキキ。

そんなキキにこれまでに無かったある異変が起こってしまう。

宮崎駿氏の映画の中では凝縮して表現される部分も、
原作ではもっとゆっくり、じっくりとキキの成長と歩調を合わせるように描かれていく。
この「魔法のとまり木」は、キキが大人の魔女として、
乗り越えるべき心の壁が描かれている。

映画ほど激しくはないが、普通の女の子としての心の揺れと、
魔女として成長しようとしているキキの思いがしみじみと伝わってくる。

そして、最後には次のキキの姿を想像させる楽しみを残し、
物語はキキのほうきのようにぴょーんと高く飛翔してこの巻を終えるのだ。

さて、それがどんな楽しみなのかは読んでのお楽しみだ。



私が今回この物語の中で一番好きなシーンは、キキが二十歳になる瞬間だ。

キキは、たった一人でその瞬間を迎える。
その光景が孤独と自由と自立、という日本の本来「成人」という意味での
二十歳にも通じるような気がするのだ。

普通の若者ならば、多くの友だちに囲まれてお祝いしてもらったり、
家族に囲まれて暖かい成人の時を迎えるということもあるだろう。
中には愛する人と2人で祝う人もいるだろう。

しかし、キキはたった一人、夜と朝の間に漂いながら、魔女として二十歳の時を迎える。

それは、きりりとした大人の女性として生きていこうとする前向きな「生」の姿だ。
その美しく、やさしく、潔い表現に、ふと自分が二十歳を迎えたときを思い出そうと
してみるが、なかなか思い出せない。(まあ、その程度のものだったのだろう)

キキの物語も、次回は大きく飛躍を遂げる。
さて、どんな物語に大きく成長するのか?
満月の夜にはふと思い出しながら、楽しみに待っていたい。

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※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。

魔女の宅急便 その5 (5)

魔女の宅急便 その5 (5)

  • 作者: 角野 栄子
  • 出版社/メーカー: 福音館書店
  • 発売日: 2007/05
  • メディア: 単行本


nice!(1)  コメント(4) 
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コメント 4

yworfutig

「魔女の宅急便」って原作があったんですね!
20才になったキキ見てみたいです!
by yworfutig (2007-07-09 21:32) 

おはなし村ゆめ

そうなんだ〜。
知らなかった!とても、おもしろそう。
by おはなし村ゆめ (2007-07-09 23:43) 

ニライカナイ店主

クレマチスさんへ>
ご来店いつもありがとうございます。
そうなんですよ。原作もまたアニメとは別の感動やできごとがあり、
味わいがあります。これまでの作品もコメントしていますので、
「物語や絵本の世界を楽しみたいときに」のカテゴリーを
チェックしてみてくださいね。
by ニライカナイ店主 (2007-07-11 01:32) 

ニライカナイ店主

おはなし村*ゆめさんへ>
ご来店&ナイスありがとうございます。4、5作目と、どんどんキキも
大人になっていきます。こういう児童文学がこれからどう展開していくのか
次作も楽しみです。
by ニライカナイ店主 (2007-07-11 01:34) 

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