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若だんな旅に出る! 「うそうそ」 畠中恵 [物語や絵本の世界を楽しみたいときに]


「うそうそ」 畠中恵 新潮社 2006年

みなさん、しばらくお久しぶりです・・・
しばし事情がありアップが遅れておりました。
これから山のようなストックからまた皆さんに楽しい本、お薦めしたい本、
ちょっとひっかかった本など、取り揃えてカフェを開いていきたいと思っています。

まずは、いつもご来店くださるねこばすさんがはまっている、と書いてくださった
シリーズから・・・。

                        *****


「しゃばけ」以来の若だんなシリーズである。
今回、なんとあの回船・薬問屋の若だんなであり、
妖の血を引く体の弱い若だんなが箱根に湯治にいくという。

そんな、江戸時代の旅が、
あの虚弱体質の若だんなにできるとは思えないのだが・・・
問屋の両親や妖の兄やまで乗り気である。
それは、なぜか若だんなが変な夢を見たり、
江戸にも地震がおきる妙な時節でもあったのだが・・・。

さて、この旅が無事な湯治で終わるはずがない。
若だんなシリーズ始まって以来の大立ち回りである。
いろんな新たな登場人物、その者がいったいどんな立場のものなのかも
見方なのか敵なのかもわからず、物語は二転、三転する。

若だんなも、今回は同じような立場の少女と出会い、その心の内を知りながら
心を開くことの出来ないもどかしさや、
少女の背負った運命の重さにともに悩む。
(私はここにいる。・・・でも誰かの、何かの、この地の役に立っているんだろうか)
・・・と。

江戸でも抱えていたこの思いが、さらにこの箱根の地の混乱の中で
若だんなの胸を騒がせる。

しかし、この気持ちは、実はいつも寝たきりの身体の弱い若だんなだけではなく、
今の時代を生きる私達も時として感じることなのではないだろうか?

自分の器の大きさを推し量り、目の前の現実になんとか立ち向かおうとして
でも、何もできないかもしれないと虚無感にかられる・・・。

そうした若だんなのさらなる精神的成長をうかがわせるとともに、
神々とそれを守るものたち、人間の欲望、そして良心、
さらに妖の世界がうずまいて、
今回は非常におもしろいエンターテイメント作品に仕上がっている。

ぜひ、しゃばけシリーズを読んで、
この作品までたどりついていただきたいと思うのである。
そんな読み甲斐のある作品であった。

<Amazon.co.jp へのリンク>
※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。

うそうそ

うそうそ

  • 作者: 畠中 恵
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/05/30
  • メディア: 単行本


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コメント 3

今日は「おまけのこ」を借りてきました^^
最近、量を読むので図書館を愛用中・・・すいません。
でも、好きな本はちゃんと買ってますから!
帰省がてら小旅行するのに何を持っていこうかと・・・・思案中です!
by (2007-08-07 21:33) 

ニライカナイ店主

ねこばすさんへ>
ナイス&ご来店ありがとうございます!
私もこのシリーズは蔵書が既に一杯一杯なので、お借りしてます。
図書館を自分の書庫と思っていればいいのかな、とも。
小旅行には文庫がいいですよね。旅にちなんだものでは、
ちょっと怖いですが阿刀田高氏の「コーヒー党奇談」などは夏らしい・・・
少し昔の作品ですが、村上春樹氏の「中国行きのスロウボート」も
夏の作品が多いです。ハードカバーでよろしければ、畠中氏の
新シリーズ、「まんまこと」はかなりお薦めです。良い旅を!
by ニライカナイ店主 (2007-08-08 08:12) 

ニライカナイ店主

桜千鳥さんへ>
初めてのご来店ありがとうございます!
いつものんびりしたマイペースのブックカフェですが、お気軽にまた
遊びに来てくださいね。お待ちしています!
by ニライカナイ店主 (2007-08-08 08:14) 

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