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前内閣崩壊の背景とは 「空白の宰相」 [人生や物事について考えたいときに]


「空白の宰相 『チーム安倍』が追った理想と現実」
                        柿崎明二・久江雅彦著 講談社 2007年

昨年9月、急に退陣した安倍首相。
確かに色々なことが雪崩のように短い時間に起こった。
しかし、本当に背後にあったものは何なのか。
それを共同通信政治部記者の2人がパズルをはめていくように丹念に描いている。

首相就任時、ある種華やかな期待を受けて立ち上がった「チーム安倍」。

今、国会中継で小泉元首相とともに映し出される安倍氏は、なんとものどかな表情だ。
いったいあの時期、何が起こったのか。

私達一般国民が知りうることのできる範囲での出来事は
天下り阻止を目的とした国家公務員制度改革への着手であったり、
揮発油税を含む道路特定財源の一般化問題であったり、
宙にういた年金問題の露呈であったり、
閣僚の相次ぐ不祥事であったり、不可思議な人事や辞任であったり、
不幸なことに自殺であったりするのだが。

今、こうして偶然にも国会開会時にこの作品を読んでいると、
すべてが今に繋がっており、
そして、置き去りにされているといえる。
あるいは、更に悪化しているというべきか。

表面だけを見ていると、少し運も悪かったのではないか、とも思える前首相である。

しかし、「チーム安倍」の構成や前首相の気性を考えると、
曖昧模糊とした中に様々な思惑が跋扈する政界において、
精神的に若すぎるチームであったのかもしれない。
また、前首相の性格・性質が、そもそも「チーム」で支えねば動かすことのできない
重責ある一国のトップ・プロジェクトにおいて、淡白・個人主義すぎたのか。
もちろん、私と前首相は「お友だち」ではないので、本当のことはわからい。

記者2人の取材の軌跡をたどると、
そのチームそのものが果たして成り立っていたのかという本命題について
実はチームリーダーその人が、チームの巻き込まれている嵐から一人離れ、
傍観者であったのではないか、とさえ思えてくるのである。

全力でこの人を支えようとするチームメイトをそもそも本気で集めたのか?
それさえ疑問である。

いわゆる「お友だち内閣」と言われながら、実は「本当のお友だち」であったのかどうか。
さらに、閣僚級以外の影で支える立場の事務方が、本当に信頼できる、力ある存在で
あったのかどうか。
それは、最後にはトップが求心力を持ち、「尽くしたい」と思わせる何かを
備えているか否かにもかかってくる。

              *******

一般の会社組織等でもよくあることだが、
本当に人間の集団というのはやっかいなものであるというのが、読後の正直な感想である。

しかし、これはある会社の単なるプロジェクトの話ではない。
一国を動かす、まさに中心核の話なのだ。

この取材は確かに2人の記者が行った「ある切り口」からの結果である。
鵜呑みにはできないまでも、日本人として、国を動かしているものについて
ううむ、と考えさせられるものがある。

記者の一人は、
「『チーム安倍』は崩壊していない。はじめから実態として存在していなかった。」
とあとがきで述べている。

小さな島国の膨れ上がった国家。
それを傍観するわけにはいかない。
なぜなら、私達も国民である限り「日本」というチームと
決して無縁ではいられないはずだから。

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※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。

空白の宰相 「チーム安倍」が追った理想と現実

空白の宰相 「チーム安倍」が追った理想と現実

  • 作者: 久江 雅彦, 柿崎 明二
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/11/08
  • メディア: 単行本


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歩林

お久しぶりです。
入院してまして、本が私をとても助けてくれました。
違う世界へいけるから本はいいですね。
入院にあたり、こんな私も気持ちが煮詰まってしまいそうな
時があったのですが、本に助けてもらいました。
今年も、また素敵な本の紹介楽しみにしております!
by 歩林 (2008-01-23 18:31) 

ニライカナイ店主

歩林さんへ>
ナイス&ご来店ありがとうございます。
怪我されていたようで・・・大変でしたね。確かに動きに制限がある時、
本は「どこでもドア」になってくれますよね。
どうかお大事になさってください。これからも気軽に遊びにいらして
くださいね!!お待ちしています。

はっこうさんへ>
いつもご来店&ナイスありがとうございます。今後もご愛顧ください。
by ニライカナイ店主 (2008-02-01 17:54) 

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