子供向けではないファンタジー?「黄金の羅針盤 ライラの冒険」フィリップ・プルマン [物語や絵本の世界を楽しみたいときに]
「黄金の羅針盤 ライラの冒険」上・下 フィリップ・プルマン 大久保寛訳
新潮社 2007年
最初、子供向けの児童文学かと思って読んだが、どうもすべての子供に読ませるには
アクが強いように思う。
物語のはじめに、ミルトンの「失楽園」からの引用があり、この意味も大人であっても
そうそう簡単に受け入れられる容易な内容ではない。
さて、この物語は誰のために書かれたものなのか。
冒頭に断り書きがあるように、この「黄金の羅針盤」は3部作の1作目であり、
私達が暮らす現実世界と似ているが、「多くの点で異なる」世界で起こるできごとである。
イギリスと思われる(実際、主人公ライラは、オックスフォード大の学寮で
訳あって暮らしている両親を事故でなくした少女、という設定である)土地から物語りは始まり、
そこからオーロラが空を彩る北方へと舞台を移す。
ライラは自由奔放で、いわゆる少女、というよりガキ大将といった様子なのだが、
ある世界にいくつもない大切なものを手に入れたことで変わっていく。
また、ライラの身の上もかなりややこしい状況であることもわかってくる。
こういうことは、大人はすんなり読み進められるが子供はどうだろう?
多くの童話がそうであったように、子供たちもそれらのことにこだわらず、
物語の先にあるものへの興味に引っ張られていくのだろうか?
下巻の最後にはスピード感が感じられる。
あるいは映画向きなのかもしれないが、見てみないとなんともいえない。
確かに、私達が暮らす世界と似ているけれど、全く違う世界。
同じ言葉ながら異なる意味を持つ言葉。
第一部だけではこの物語の意義をはかることはできない。
小さな子供たちに勧めるのは保護者が読んでみてからのほうがいいと思われるが、
これからの展開と出会ってからさらにこの物語の真意について語りたいと思う。
<Amazon.co.jp へのリンク>
※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。
はっこうさんへ>
毎度ご来店本当にありがとうございます。サービスチケットでも
進呈したいところです。このライラシリーズは先を読んでみないと
ちょっと意見を書きにくい点もあり、今後続けて読んでみて、また
みなさんにご紹介したいと考えています。
by ニライカナイ店主 (2008-03-27 08:15)