中学生が急に医大生になる?「医学のたまご」 海堂尊 [ミステリーを楽しみたいときに]
「医学のたまご」 海堂尊 理論社 2008年
「チーム・バチスタの栄光」(2006・1)
「ナイチンゲールの沈黙」(2006・10)
「螺鈿迷宮」(2006・11)
「ジェネラル・ルージュの凱旋」(2007・4)
「ブラックペアン1988」(2007・9)
「ジーン・ワルツ」(2008・3)
・・・と多作の海堂氏である。
しかも、病理学者という職を持ちながらの執筆はさらに続き、
「死因不明社会」のような現職からの訴えも
(主にAi=オートプシー・イメージング・死亡時画像病理診断)
著作していて話題になっている。
そんな中、「日経メディカル」に2007年2月から1年間連載されていた小説が
単行本化されたのがこの「医学のたまご」である。
ヨシタケシンスケ氏のとぼけたイラストもあって、なんだか気楽に手に取れる
一冊なのだが、内容はなかなかのハード・ボイルドだ。
ただし、主人公は中学1年生なのだけれど・・・。
あるとき、実力ではなく「ある理由」から
文科省の行ったテストで全国一位になってしまった中学生がいた。
しかもその中学生は「あの」桜宮市立中学に通っていた。
そう、あの一連の作品の舞台となった東城大学付属医大のある桜宮である。
そして、彼は中学2年生の春から、なんと中学生でありながら、
医学部で研究をするはめになってしまうのだった。
そのドタバタの中で、医学部研究室や研究発表の内情、権力闘争、
友情、若者なりの仁義の切り方などなど、どう話が展開していくのか
最後ははらはら。
そんな笑ってしまうようなありえない設定とドタバタの中に、
人としての生き方とか、譲れないもの、医学とは何なのかということを
ふと考えさせられる場面が横切る。
そして、海堂ファンにたまらないのは、舞台が数年後の東城大学医学部なので
早々たるメンバーが時に立場を変えて登場するのである。
それは読んでみてのお楽しみだ。
どうもこの作品には続編の可能性もあるらしい。
それもまた、多作の作者ゆえの楽しみである。
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※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。
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