テンポのよい刑事モノ 「犯人に告ぐ」 雫井脩介 [ミステリーを楽しみたいときに]
「犯人に告ぐ」 雫井脩介 双葉社 2004年
幼児誘拐事件の現場指揮をして、最悪の結果となってしまった過去を持つ刑事。
たたき上げから警視になった彼はそれでもとばされた田舎の所轄で検挙率を挙げていた。
そんな彼がらちのあかない連続幼児殺人事件のため、「現場」に呼び戻される。
しかし、そこには「汚れ役」として捨て駒をもとめる上層部と
個人的な利益のために一部マスコミにリークする若い課長、
そしてうさんくさい目でしか彼を見ない捜査一課の面々が待ち構えていた・・・
久々に面白くテンポのよい刑事モノを読んだという気もするが
あえて劇場型の捜査方法をとるなど、やや実感のない展開もある。
しかし、一つの大きな取り返しのつかない失敗の背負った
一人狼の刑事が、少しづつ現場の刑事や鑑識の協力を得て
最後の最後に犯人をおいつめていくところはその場に自分もいるような気もする。
何度刑事モノを読んでも思うのだが、なんと腐りきった組織だろうかと
架空の世界だとは思ってもうなってしまう。
煙のないところには火はたたない。
命や刑事としての使命を本気で守ろうとすればするほど煙たがられる世界。
それは私達の命や安全を守る組織だからこそ、本当にこんなことがあるとは
信じたくないけれど、特殊な組織だからなお、隠された暗部があるのかもしれない。
あっという間に読ませる文体と構成もなかなかのものである。
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※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。
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