八方塞がりなあなたへ「スランプ・サーフィン」光野桃 [落ち込んだときに]
2003年7月初版(2001年文藝春秋刊行)
最初、この本を手に取った時、私はタイトルに我が目を疑った。
それは、「おしゃれの視線」「私のスタイルを探して」「着ること、生きること」などで
ファッションやメイク、スタイルという切り口をもってフツーの女性達に
スパッと喝を入れてきた光野さんと、
スランプということばがあまりにかけはなれたイメージだったからだ。
この本は文庫になる前2001年に雑誌等に連載していたものに
加筆等して単行本化されていたが、
私は文庫として初めて手に取った2003年当時、
「あの肩で風を切るように颯爽と生きてきた光野さんにも、
スランプってあるのかな」といぶかしく思った。
本を読んだ後も、「あの光野さんが」というイメージは正直消えなかった。
余りに、以前のファッションや生き方に対する書きっぷりが潔く
自信に溢れていたのに対し、この作品の内容がアンバランスだったからだ。
しかし、あれから何年かが経ち、それなりの年齢を重ねた私は、
ある日、猛烈にこの本を読みたくなり、本棚を引っ掻き回し探し当て、
読みながら以前とは全く違う気持ちになった。
そう、この本には、「読み時」があるのだ。
特に、いろんなことに一生懸命になってきた人、真面目に働いてきた人、
子育てや配偶者、家族の都合で様々なストレスが重なってきた人が、
ある時、「なんだか今までのようにいかない」「もうだめかもしれない」
「体調が悪い」・・・と立ち止まるときがある。
そんな時、この本の意味が初めてわかるのだと思う。
読んだからといって、本が助けてくれるわけではないけれど、
「自分だけじゃないんだなあ」というほっとした気持ちにはなれる。
そして、書かれていることのうち、いくつかを実行してみよう、
と思うかもしれない。
そう、この本は人生のスランプに自ら激しく落ち込んだ著者が、
もがきながらもスランプの中で生きていくためのいくつかのヒントを
身を張って私たちに教えてくれている本なのである。
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※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。