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課長って何なんだろう? 「ニッポンの課長」重松清 [仕事に悩み考えているときに]


「ニッポンの課長」 重松清 2004年1月初版 日経BP社

この本、まず表紙が面白い。
タイトルをもじって、重松さんの名詞のデザインになっている。多分、本当の名詞サイズ。
ブックデザイナーのお二人、まず拍手。
この本は「日経ビジネスアソシエ」に2003年頃連載されていたもので、刊行にあたって
各課長の後日談が追記されている。
約2年のブランクがあるので、今その会社がどうなっているか、また、社会が当時と
どう変わっているかを比べても興味深い。この2年で案外日本が変わったことがよくわかる。

で、中身なのだが、大きく5つの柱に分かれている。
1 会社を立て直した課長
2 ヒットを飛ばしたイケイケ課長
3 社会、将来を見据えた社会派課長
4 別のことで有名人でありながら、全く違う分野でがんばっている課長
5 地方自治体で「ムラおこし」に励む課長

まず、冒頭の項目で、雪印乳業のお客様センター課長の話は泣けた。
同様の仕事を少しでもしたことのある人なら、きっと同じ気持ちにならずにいられないだろう。
会社という組織の厳しさは、うまく歯車が回っているときはいいのだが、何か起こったときに
その責が思わぬところに思わぬ重さで降りかかってくる、という点だ。
それまでは商品の問い合わせを受けていた部門が、いきなり矢面に立たされる。
社中はガタガタで情報が入ってこない。
中には、個人的な憂さ晴らしとしか思えない、言葉にできないようなひどい電話もある。
こうした状況でも、誰かがそれを引き受けていかなければならない。それが組織である。
そして、その担当を仕切る課長の重責。部下を支える立場として、自分が泣くわけにはいかない。
その厳しさを思い知る。

また、サントリーの「DAKARA」をヒットさせたのは、ラグビーファンなら誰でも知っている
本城和彦課長である。これにも驚いた。よくラグビー指導とのバランスをとっているなあと感心した。
きっと、うまくチームプレイが仕切れているのだろうと読んでいてわかる。

最後に、地方自治体(県、市町村など)の名物課長も取り上げられている。
中には南高梅(美味しいですね)のブランドを確立すべく、「うめ課長」として奮闘する人もいれば、
キャビアの国産化に向けて「チョウザメ課長」として新日鉄釜石から出向している人もいる。
その中で、沖縄県でITを担当している課長は、観光だけに頼らず沖縄人が地元で働く場を
作り出すためにもコールセンターの誘致に努力していた。
それは、今、現実のものとなり、多くの大企業のコールセンターが沖縄本島に移設され、
コールセンターのメッカとなっている。

こうして様々な課長さんの活躍を読んでみると、やはり、組織で中間管理職が生き生きと
動けることが、健康な組織の条件の一つだと思う。
中間管理職が次々辞めていったり、優秀な人から早期退職に手を上げたりして、どよ~んとした
よどんだ空気が立ち込めている組織は、近いうちに沈没するかもしれない。

それを食い止めようといくら若手ががんばっても、要は中間管理職がどれだけ若手をまとめ、
腹をくくって幹部に切り込んでいくかが肝心なのだ。
そこに組織、そして日本の本当の再生はかかっていると思うのだが・・・。
言うは安く、行うは難し。今、一番辛いのも「真面目な」課長さんなのかもしれない。

重松さんは、冒頭で、「苦労話よりも夢のほうに重点をおいて話してもらった」と述べている。
そのことと、重松さんのわかりやすい文体のおかげでテーマのわりにはかなり読み進めやすい。

組織に所属している方はその立場、立場で読んで、決して損はない一冊である。

<Amazon.co.jp へのリンク>
※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。

ニッポンの課長

ニッポンの課長

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2004/01/26
  • メディア: 単行本


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コメント 2

sei71

こんにちは~★
この本,面白そうですね♪
まず,名刺サイズ名刺風表紙に心惹かれておりますw
こんな小粋な表紙には面白いものが多い気がする!
と勝手に決めてかかっている惺です(笑)
>各課長の後日談が追記されている。(中略)この2年で案外日本が変わったことがよくわかる。
大変興味をそそられます.
し,「課長」という今まで「社長」に比べ?注目されなかった管理職とその思い.
そこに注目したその視点に日本の変化を見る新たな視座を示してくれる気がします.PS:今度書店で探してみますww
by sei71 (2005-12-09 15:41) 

ニライカナイ店主

惺さんへ>
こんにちは。ご来店ありがとうございます。
この本は、当時仕事をしていた私に大変勇気を与えてくれた本です。
今、自分の状況も社会の状況も変わって、それでも読み甲斐があったのは、
あくまで重松さんが「夢を語ってほしい」というポイントをずらさなかった
からだと思います。本は何年かして、再度評価されるということがあると
思いますが、そういう点では、この本は時代のギャップも楽しみつつ
読んでいただければ、と思います。
ちなみに、重松さんはシリーズ化されたのか(?)また違った視点で
レポートものを出されましたので、近いうちにご紹介しますね。
by ニライカナイ店主 (2005-12-10 12:22) 

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