文系と理系の壁を越えて 「おとぎの国の科学」 瀬名秀明 [エッセイやマンガでリラックスしたいときに]
「おとぎの国の科学」 瀬名秀明 晶文社 2006年
1995年、東北の大学院で薬学を研究しているときに執筆した
「パラサイト・イヴ」(角川書店)で日本ホラー小説大賞を受賞して以来、
現在も大学にありながら様々な執筆活動をしている。
そんな彼のエッセイ集がこの作品である。
「パラサイト・イヴ」で衝撃を受けた方も多いと思うが、私も当時読んで
「もしかしたらこういうことが本当に起こるのではないか」と気をもんだ一人である。
あの作品があまりに衝撃的で、しかも研修室から生まれた生々しいテーマだったこともあり、
瀬名氏の人となりを当時いろいろ考えたものである。
このエッセイは「エッセイは苦手だ」という著者が十年にわたり様々なテーマで、
様々な場所に公表してきたものたちである。
彼のエッセイを読んでいると、文系・理系の壁
(いまやそのような物言いも古臭いが)はもちろん、
科学と宗教、事実と想像を超えて哲学的な一本の線を追っているのがわかる。
それは多くのものを書く人々、映像を作る人々、
そして真実をあらゆる角度から追究してきた人々が同じように突き詰めてきたものだ。
本当のこととは何か、真実とはなにか。
それはすべての人や生き物に果たして共通なのか。
どのエッセイを読んでもその問いがそこにあるような気がする。
もちろん、エッセイ集なので、瀬名氏の人脈や交流、好きな作家、
作品につながる様々なエッセンスももりこまれ、肩の凝らない読み物となっている。
「科学」とついているからといって、距離をとる必要はない。
特に、「甲殻機動隊」や「マトリックス」などアニメ・映画ファンにも楽しめる章もある。
また、ロボットについてのくだりでは、マジンガーZやドラえもんなど、
子どもの頃初めて出会うロボットから感じたことを述べているくだりもあり、
現在の先端技術だけでない日本人とロボットとのつきあいのようなことにも
触れていておもしろい。
ぜひ、気楽に手にとって読んでみて欲しい一冊である。
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※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。
berudenさんへ>
ナイス&ご来店ありがとうございます。
パラサイト・イヴでは衝撃を受けましたが、こうしたエッセイも学際的な
面白さがありました。ぜひ機会があったら手にとってみてください。
by ニライカナイ店主 (2008-02-23 00:26)
≪…本当のこととは何か、真実とはなにか。…≫を、⦅自然数⦆に[投影]された[魂]の絵本「もろはのつるぎ」が、
ちいさな駅美術館 Ponte del Sogno (JR 藤並駅) に
令和二年一月七日~令和二年一月二十四日
やって来る。
by 絵本のまち有田川 (2019-12-30 16:26)