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「魔女の宅急便その4キキの恋」角野栄子 [物語や絵本の世界を楽しみたいときに]


「魔女の宅急便その4キキの恋」 角野栄子著 佐竹美保画
福音館書店 2004年3月初版

13歳でひとりだちし、コリコという見知らぬ町で宅急便の仕事をしながら、多くの人たちと
いろんな「おとどけもの」を通じて成長してきたキキも、この作品ではもう17歳である。

皆さんにとって、17歳とはどんな年齢なのだろうか。
私が小さな子どもだったころには、17歳とは光り輝き、恋も将来もいろんな可能性が
無限に広がっているような、そんな憧れの年齢であった。
しかし、現実はそんなに甘くなくて、確かに恋はしていたけれど思う人には思われず、
思わぬ人には何故か思われるような切ない恋だった。受験のことで頭が一杯で、
「将来の夢」という大きな枠で考えることもしていなかったように思う。
親とは年がら年中意見が合わず言い合いをしていて、家でも部屋にこもることが多かった。
友人づきあいは楽しくもあり、大変でもあり、それでも学校生活をそれなりに楽しみつつ、
平凡な日々を送っていた。

もし、17歳の私が正面だけでなく、時々でもキキのように広い空を見上げていたら
何かが変わっていただろうか、と思いながらこの本を読んでいた。

副題にもあるように、この作品はキキととんぼさんの恋を中心にしながらも、
キキが大人の魔女へと確かに成長していくしっかりとした幹のようなものが感じらる。
遠い学校へ行ってしまったとんぼさんが帰ってくるはずの初めての夏休み。
ところが、わけあって、とんぼさんは山に1人こもることを選ぶ。キキがしっととも思えるような
イライラにとらわれ、またも自分を失いかけるところから物語は始まる。

とはいいつつ、今作もいろいろな不思議なおとどけものや依頼主が登場し、また、
懐かしい知り合いが再登場し、キキの生活を彩り、成長させていく。
それにしても、この作品に登場する依頼主たちは皆個性的で、バイタリティに溢れている。
そこは大人としても学ぶところが多々あると、このシリーズを読むたびに感じる。

さて、キキととんぼさんの恋はいかに?
ぜひ手にとって、ご自分の心の中でしみじみ味わっていただきたい。

そして、最後に、さらにキキに大きな試練が待っている。
これは私が同じ17歳の時にも起こったことで、とても人事(魔女事?)とは思えず動転した。
でも、その出来事がキキを大人の魔女として、読者にも、キキ自身にもより確かなものに
させていくことになる。
最後の展開について、おそらく著者は結末を迷ったのではないかと私は想像する。道は二つ。
でも、こちらの展開を選んでくれたことを1人の読者として感謝したい。

さて、この続編は書かれるのだろうか?
いずれにしても、もし、思春期にこの作品に出会うことができれば、なんだか幸せな生き方と
恋ができる大人になるような、そんな気がする作品だ。

もちろん、もう大人になってしまった私たちでも、しっかり地に足をつけつつ、
大きな空を見上げることの大切さに気がつくことはできるのだ。

<Amazon.co.jp へのリンク>
※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。

魔女の宅急便〈その4〉キキの恋

魔女の宅急便〈その4〉キキの恋

  • 作者: 角野 栄子, 佐竹 美保
  • 出版社/メーカー: 福音館書店
  • 発売日: 2004/03
  • メディア: 単行本


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コメント 13

武田 42歳おじさん

 初めてブログをみて、初めてのコメントです。7歳の娘と4歳の息子がいるどこにでもいるおじさんです。魔女の宅急便は映画が流行った頃、本屋で立ち読みした程度でしたが、内容はあまり覚えていません。ちなみに映画の方は4回も映画館に足を運んだ覚えがあります。残念ながら子供に絵本を読み聞かせをする習慣がなくて、たまに子供が学校の図書館で借りてくる本を見てやる程度です。以前は子供の為と思い本屋で絵本を探した時期がありましたが、自分の気に入ったものが見つからずそれから探さなくなってしまいました。絵本を選ぶのも人それぞれでしょうが、なにかコツと言うか気を付けている点があれば教えてください。参考にしたいです。
by 武田 42歳おじさん (2005-12-03 22:06) 

ニライカナイ店主

はじめまして。ご来店ありがとうございます。
私は子どもがおりませんし、昔児童文学を少し勉強したこと、読み聞かせのボランティアをしていたこと、最近まで図書館の活動にかかわったことくらいしかありませんで、とてもアドバイスできるほどのことはお伝えできないと思います。ですから、あくまで私見、ということで以下お読みください。

お子さんのお1人は小学生ですよね。小学校の図書館というのは、地域によってちゃんと司書がいてしっかり年齢にあった図書が整備・指導されているところと、全くお話にならないほど荒れている図書室もあり、格差があります。
ですから、学校の図書館で本を読んでいるから大丈夫、というのは状況を確認しないと?です。何しろ、最近はマンガやダイジェスト本も混ざっていたり、どんな本なのか全く整理されていない荒れた図書室もあるようですので。
何日か前に脇さんの「読む力は生きる力」という本を紹介しましたが、この本をお読みになることもお勧めします。私はこれでかなり経験が論理として整理できました。また、昔からの良書も何冊も紹介されています。
あとは、お近くの図書館に児童書が充実していればそこで、児童書担当の方に相談してみるのも手です。そういう担当がいない、あるいは力量がないと空振りですが・・・。
あるいは、いくつかお薦めの出版社がありますので、そのHPを参考にされてもいいかもしれません。福音館書店、岩波書店などは昔からずっと人気のある絵本を多く出版しています。偕成社もエリック・カールなど、よいものもあります。たとえば、エリック・カールなら、お嬢さんには「パパ、お月さまとって!」(ちょっとやさしい過ぎるかもしれませんね、7歳だと)とか、息子さんには「はらぺこあおむし」など、年齢や性格によって、選んであげるといいかもしれません。(もう読んでいるかもしれませんね、有名なので)
一番良いのは、一緒に図書館に行かれて、ご自分が子どもに読ませたい、読むといいに違いない、と思うものをお子さんに見せてみて、嫌がらなければ借りていく、というのを続けられることだと思いますが・・・忙しいとなかなかできないことです。でも、小さいときの読書経験は、人生を生きていくための一つの大きな力になりますから、少し時間が割けるようでしたらそうしてあげるとお子さん達も喜ばれるのではないでしょうか。
以上、あくまでもご参考までに。
でも、こんな風に考えてくれるお父さんがいて、お子さん達は幸せですね。
私のブログよりも、もう少し子ども向けの本を紹介しているブログがありますので、ご紹介します。この方も小学校で読み聞かせをされているようですよ。
http://blog.so-net.ne.jp/ehontakarabako/
by ニライカナイ店主 (2005-12-04 14:47) 

ニライカナイ店主

追伸です。
もし、良い本が見つかったら、お嬢さんに「弟に読んであげて」と
頼んでみてはどうでしょう?私は3つ下に弟がいまして、子どもの頃
よく練る前に読んで聞かせていました。それで本がお互い好きになりました。
そんなご家庭も周りにあるようですよ。もちろん、お嬢さんがその気になったら、ですけれどね。(笑)
さらに、もう少しするとお嬢さんは絵本から文字の多い児童書へと興味が
移る時期でもあります。良書にめぐり合えること、それを見つけ出す力を
自分自身で持てるようになることを心から祈っております。
by ニライカナイ店主 (2005-12-04 14:55) 

武田 42歳おじさん

 とても懇切丁寧にアドバイスをしていただき、本当にありがとうございます。
どこまで実行力が私にあるかわかりませんが、努力してみたいとおもいます。
 ちなみに私もブログやってみようかと今日ブログ入門の本を買ってきました。
 なんの取り柄の無い私ですがチャレンジしてみたいです。
by 武田 42歳おじさん (2005-12-04 18:18) 

ニライカナイ店主

武田さんへ>
お返事ありがとうございます。
ご自分のブログを立ち上げたら、ぜひ教えてくださいね。
またのご来店&コメント(特にその後のご努力の経過)を
お待ちしています。
by ニライカナイ店主 (2005-12-04 22:08) 

武田のおじさん

とりあえずブログ始めました。これと言った取り柄も無いので薄い記事ばかりになると思いますが、よろしくおねがいします。日記雑感で登録しました。
by 武田のおじさん (2005-12-08 16:07) 

ニライカナイ店主

武田さんへ>
さっそく先ほどブログにおじゃましてきました。
ナイストライです!楽しみにしています。
by ニライカナイ店主 (2005-12-09 00:46) 

武田のおじさん

  ここからコメントして届くのかな?今日本屋で絵本を買いました。「きみはほんとうにステキだね」というティラノサウルスシリーズ第3弾です。今晩読み聞かせしたいと思います。感想はブログに書くつもりです。乞うご期待!
 本の紹介が入ったのでジャンルを「本」にしたのですがころころ変えてもいいのでしょうか?ブログの先輩としてアドバイスをいただけるとありがたいです。
 では、さようなら。
by 武田のおじさん (2005-12-11 18:45) 

ニライカナイ店主

武田さんへ>
ちゃんとわかりましたよ!
さっそく絵本買われたんですね?
ジャンルは物事によって、変えてもかまわないと思いますよ。
皆さん、雑感とか、旅のこととか、内容によって変えていると思います。
ソネットブログトップで、ジャンルで探すときの頼りにするだけですから。
お互いマイペースで楽しみつつやっていきましょうね。
by ニライカナイ店主 (2005-12-13 00:27) 

武田のおじさん

 いろいろアドバイスありがとうございます。そしてコメントありがとうございます。一人でもコメントをいただけると張り合いがあってとてもうれしいです。コメントを書いたら、そのコメントに対して一言感想など聞きたくなるものですが、何の反応もないブログさんがいるので少し寂しい気もします。でも、人それぞれだから仕方ありませんよね。
by 武田のおじさん (2005-12-15 01:39) 

ニライカナイ店主

武田さんへ>
ブログは自己満足的なところもありますからね・・・。
私は自分の読書記録と、やはり「紙」の本の良さを残していきたい、
という気持ちもあります。また、自分が読んできて、いろんな場面で
助けられた本が、もしかしたら他の人にもプラスになるといいなあ、という
気持ちでこのブログをやっています。
多分、コメントがなくても「ふーん、こんな本があるんだ」と頭の隅に
メモしてくれている方もいると思うので、あまりコメントの多少は
気にしないです。
確かに、たまに武田さんのような方と本についてのお話ができると
楽しいですよね。これからもどうぞよろしく。
by ニライカナイ店主 (2005-12-15 09:21) 

武田のおじさん

 「あらしのよるに」は今、どこの本屋にも出ているし、絵柄の違うのも数点出ているようですが、こんなにシリーズがあるとは正直思いませんでした。長編が嫌いな私としては、ここで腰が引けてしまいました。と言っても一つひとつが読みきりだから、子供には「映画が先か?本が先か?」ちょっと迷っています。
 絵柄といえば、子供の頃に読んだイソップ物語の絵が、今も強烈に印象に残っているのですが、同じ題材でも「絵」から受ける印象やインパクトでかなり物語の深みや印象が違ってくるのはとても不思議な気がいたします。
by 武田のおじさん (2005-12-16 16:19) 

ニライカナイ店主

武田さんへ>
こんばんは。絵本なので、1冊の文章量は少ないですから、
大丈夫ですよ。もちろん、そのなかに含まれている意味は深いですけれど。
お子さんに、本屋さんでちょっと絵を見せて、「怖い!」っていったら
映画を先にしてはどうでしょう?あとは、立ち読みでも大人ならさっと
読めますので、武田さんの判断でいいと思います。映画は最後が少し
原作と変わっているようです。
あと、コメントをお書きいただく時は、その記事の下の「コメント」のところを
クリックして書いてくださいね。よろしくお願いします。
by ニライカナイ店主 (2005-12-16 22:15) 

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