この数か月に読んでいた何冊かの本の話 [ちょっとだけ、ひと休み]
こんにちは。今回は少しまたおしゃべりを。
このブログでは、個人的な判断ではありますが、皆さんが手に取ったときに
何か小さくても心に残るような、あるいは塞いでいた気持ちに小さな風穴があくような、
または思いっきりリラックスできる本をご紹介させていただいています。
まあ、中には少し重たいものや、ご紹介に迷ったものもありますが・・・。
こういった「お薦めしたい」本というのは普段私が読んでいる何冊かのうちの1冊であって、
他にもいろんな分野に手を出して乱読しています。
ここ数か月あたりに読んだ本の話をしてみましょう。
唯川恵 「ベター・ハーフ」(2000年集英社)
これは、理想的な結婚「式」から新婚生活をスタートしようとしていた女性が、
まさに自分が主役になるその日に、しょっぱなから「現実」に往復ビンタをくらうようなシーンから
始まります。私がもし彼女の立場なら、決してそのまま結婚をするようなことはしないと思うの
ですが・・・。
とにかく、主人公の女性と夫の結婚生活はひどいものです。確かに、多くの夫婦が相手に
すべて自分の真実を知らせていないとしても、それにしてもひどい。
最後には「まあ、いろいろあったけれど・・・」的な終結を見るのですが、これを読んだ未婚の
若い人たちの多くは、とても結婚しようと気持ちにはならないでしょう。
確かに、これに近い夫婦の話も現実にはあると知っています。でも、あくまで一つの夫婦の形
として理解すべきと思います。この本で何を言いたかったのか疑問が残りました。
この著者のほかの作品を読まなければ理解できないことも多いのでしょうが、少し腰が引けます。
角田光代 「東京ゲストハウス」(1999年河出書房新社)
アジア放浪の旅から帰ってみると、同居していた彼女には別の男が・・・。
帰るに帰れない若者は、放浪時代に知り合った女性に電話をし、その女性が一人で住む一軒家に
同居することになります。そこはやがて、アジアで泊まり歩いてきた安宿のように行き場のない
若者達の住処のようになっていき・・・という話です。
時代感や、そういった放浪をしてきた人たちの感覚はよく伝わってきます。
ただ、主人公の男性の情けなさ、一軒家の持ち主の若い女性の最終的な行動の無責任さは
ちょっと理解できないものがありました。もし、これが今の20代の人たちのフツーの感覚だったら
ば、自分が年をとったからわからないのかな?と悩んでしまいそう。
有栖川有栖 「マレー鉄道の謎」 (2005年講談社文庫)
ミステリーは結構好きなのですが、なんと有栖川氏は初めて読みました(汗)。
しかも、表紙の絵(マレー鉄道だと思います)に惹かれて買ってしまいました。
(世界の車窓からのファンです)
トリックはさておき、人間関係の描き方、キャメロン・ハイランドの描写、そして何より冒頭で、
クアラルンプール郊外の川で蛍の光が織り成す美しい光景がその地域への旅心をくすぐります。
クイーンやカーを彷彿とさせる地域が持った特性を活かし、複雑な人間関係を描いていることは
わかるのですが、やはりいろんなトリックが出尽くした中で、「こりゃびっくり!」という結末は
なかなか望めないのでしょうね・・・。
京極夏彦 「姑獲鳥(うぶめ)の夏」 (1998年講談社文庫)
これまた初めて読みました、京極さんの本。
実は、私は日本古来のいわれとか、うらみとか、血統とかをテーマにした推理小説が苦手です。
子どもの頃、横溝正史を何冊か読んで、すっかり震え上がってしまった古傷?があり、
京極さんに興味はありつつ、いつも表紙や冒頭の数ページでもうダメ、という過去がありました。
ところが、この「姑獲鳥の夏」が映画化され、TVでおそろしいCMが何度も流され、それが頭に
残っていた私は、何故か「喰らわば毒まで」という気持ちになり、映画も終わった頃になって
何故かこの本を読むことにしたわけです。
なんというか・・・できれば、映像では見たくないような感じはしました。
が、京極不思議ワールドは悪くはないなあ、と。怖い、怖いと思いながら、とうとう読みが止まらず、
夜中に明かりをつけて眠さに負けるまで読んでいた夜もありました。
要は、著者の筆力が強いのでしょうね。
では、続編を読んでいくかといえば・・・まだ手にとっていません。
でも、また京極堂を訪ねる日もそう遠くないかもしれません。
・・・かなり長くなってしまいました。それぞれのファンの方の中には「よく知りもしないで!」と
お怒りの方もいらっしゃるかもしれません。そうだとしたら、ごめんなさい。
本は山のように日々発行されていても、自分の心にたどり着く本は一握り。
その一握りの中に、小さくても大切な宝石が紛れていることが時々あって、
だから本を読むことをやめられないのかな、と思う今日この頃です。
「姑獲鳥の夏」は、私にとっても京極作品デビュー作です(^^)。
ネットを通じて仲良くなったお友達が非常に大ファンで、粘り強く(?)ススメられて手を出してみたのです。ニライカナイ店主さん同様、こういう系統が苦手な私でしたが、不思議にこれははまってしまいましたね~。みるみるうちに京極堂シリーズが本棚に並びましたから(笑)。
でもやっぱり一番読みやすいのは最初のこの作品のような気がします。
by くっしー (2006-03-01 23:27)
くっしーさんへ>
こちらへもご来店、ありがとうございます。次に行こうか、と思うんですけれど
ねえ・・・何しろ、怖がりなもので・・・。でも、時間ができたらせっかくの出会い
なので、続編を読んでみようと思います。今はとにかくナルニアです~!(焦)
by ニライカナイ店主 (2006-03-02 00:06)
nice!とコメントいただいたので訪問してみました。
書評って、難しいものだと思うんですよ。本が好きで読んで、その良さ(あるいは良くない部分)をひとに伝える、感動をひとに伝える、こういう作業はとても難しい。わたしもブログで本について書くことが多いのですが、なかなかうまくいきません。
ニライカナイ店主さんの書評は、読みやすいし色んなことがちゃんと伝わってくるので、これからお手本にしようかと思います^^
ナルニア国物語シリーズは、子供のころ1つだけ読んだ記憶があります。欧州系ファンタジーにアレルギーのあるひとでなければ楽しめると思いますが…。わたしは現在、本屋で買おうか買うまいか悩む毎日です(笑)。
by lion0_89 (2006-03-20 08:56)
らいおんまるさんへ>
ナイス&初のご来店ありがとうございます。
本当に本のことを伝えるのは難しいですよね。あらすじを書いても仕方ないし、
読んだ本すべてがここでご紹介できる本でもないし。ただ、人の作ったもの
にはなるべく敬意を表して、けなさないようにはしていますが・・・。
この○○さんについては、らいおんまるさんと同じ理由で「え?、この人が」
という気持ちもあって、あえて載せてみました。
面白かったもの、よかったものを伝えるのは比較的楽しい作業なので楽
ですが、あらすじではない、その楽しさのエキス、ここでぐっと来た、という
ことを凝縮して書くことはやはり難しいです。お手本にはとてもなりませんが、
気楽に遊びに来てください。そういうつもりでタイトルをつけてあります。
ナルニアは、学生時代、何度か挫折しています。今、図書館が近いので
ナルニアは借りて読んでいるのですが、全部読んだら今度は自分の好きな
順番で読み直したくなると思っています。また借りるか、買うか・・・
実は私も悩んでいるんですよ(笑)。
by ニライカナイ店主 (2006-03-20 09:39)