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アロマが香る 「もし僕らのことばがウィスキーであったなら」村上春樹 [エッセイやマンガでリラックスしたいときに]


「もし僕らのことばがウィスキーであったなら」
村上春樹 1999年12月初版 平凡社

ほかのブロガーさんのコメントをきっかけに、私の好きなエッセイの一つをご紹介したい。

このエッセイは、もともとあるウィスキー会社の広報誌か何かに連載されていたものらしい。
そう、ウィスキーの本場、スコットランドでモルト・ウィスキーを楽しみ蒸留所を2箇所見学し、
アイルランドではひたすらアイリッシュ・ウィスキーを飲みにパブを渡り歩く。
ウィスキーを鍵とした旅だ。

スコットランドでは、アイル島にある7つの蒸留所のうち、
すべて職人による伝統的な手作業でウィスキー作りを続ける蒸留所と、
すべてコンピューター管理、木の樽の変わりにステンレスの発酵槽の蒸留所という
非常に対照的な2箇所を著者は訪ねる。

もちろん、村上氏が多くのページを割いているのは前者だ。
でも、後者の蒸留所だって、個性あるシングルモルトウィスキーを作っている。
しかし、90%はブレンド用に売却されている。これが現実だ。

この光景は、私がいくつか見学した泡盛の蔵元でも同じであった。
伝統的な製法か、合理的な管理による製法か。それぞれの風味があり、それは人好き好きだ。
都心では、沖縄では見たこともない名前の泡盛をよく見かける。

一方、アイルランドではレンタカーでドライブしながらのパブ廻り。
そこではパブの主人たちも納得するウィスキーの飲み方の指南があり、
毎晩きちっと背広を着てきっちり一杯飲んでいく老人がいて・・・。

その飲み方が、泡盛を美味しく飲む方法と全く同じだったので笑ってしまった。
確かに、私も美味しい泡盛がない店では(もちろん、そういう店の方が多い)、
ビールのあとにはウィスキーを飲む。おいしいビールを一杯とウィスキーを一杯。

このエッセイには村上陽子さん=奥さんの撮影した写真も掲載されている。
アイル島の青い空、家々の白い壁、緑の中の子羊たち。
アイルランドのラブリーな街並み、薄暗い居心地の良いパブのカウンター、
そして著者のわざとピントをはずしたポートレート。

うーん、近しい知り合いにすごく似ているんだな。
彼は全くの下戸なんだけれど。

まるでウィスキーの香りがしてくるような、まさにパブの片隅でグラスを傾けながら、
又は寒い冬の夜に暖かな部屋で読書灯をつけてナイトキャップを楽しみつつ読むのに
ぴったりの一冊である。

<Amazon.co.jp へのリンク>
※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。

もし僕らのことばがウィスキーであったなら

もし僕らのことばがウィスキーであったなら

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 1999/12
  • メディア: 単行本


もし僕らのことばがウィスキーであったなら

もし僕らのことばがウィスキーであったなら

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2002/10
  • メディア: 文庫


nice!(2)  コメント(6) 
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コメント 6

こんばんは。
実は私はベルギービール好きが高じて、「ただただビールを飲むこと」だけを
目的に、ベルギーを旅したことがあります。まさにビールを鍵とした旅でした。
自分と同じようなことをまさか村上春樹氏がしているなんて初めて知りました。
ご紹介ありがとうございます。なんとなく共感できそうなので、是非この本は
読んでみたいと思います!ニライカナイ店主さんが仰るとおり、バーで飲み
たい…じゃなかった読みたいですね。
by (2006-02-09 00:24) 

YumYum

ウィスキーですか。良いですね〜。
一時期、凝ったことがあります。30年もののバランタインがどうの、
マッカランがどうだとか通ぶってました。いやお恥ずかしい。
今はもっぱらクースですね。
あんまりお酒は強くないので、オトーリで死にそうになったことはありますが
少〜し飲むには体にあってるかな。
村上作品、これ頂きます。時間も時間でちょっと酔ってます。おやすみなさい。
by YumYum (2006-02-09 00:36) 

ニライカナイ店主

springsnowさんへ>
ナイス&ご来店ありがとうございます。長旅の疲れは取れましたか?
実際に旅したことがあったんですね。すごい。やっぱり旅はそうでなければ。
村上氏は半分お仕事だったみたいではありますが。普段はビール派だと
思いますよ。この本の中にも、ビールの話も少し出てきます。
写真の入った気軽に読める本なので、ぜひ、バーのカウンターで。
カッコいいよ、絶対に。
文庫も出ていますが、ハードカバーと見比べて、気に入ったほうを手にしてください。
ちなみに・・・これほど深くはないんですが、ベルギービールが出てくる本を
読んだので、次回に載せます。
by ニライカナイ店主 (2006-02-09 11:03) 

ニライカナイ店主

YumYumさんへ>
ナイス&ご来店ありがとうございます。
私も家ではほとんど飲みません。もっぱら外ですね。
確かに、ニライカナイ現地に行くとつい飲んじゃいますね、泡盛。
うちには甕出し40度5年のクースが眠っています。時々、少しずつ飲みます。
ウィスキーや泡盛を最初から薄めて飲んでいたバカな過去を消し去りたい。
オトーリ・・・危険なので避けています・・・。
by ニライカナイ店主 (2006-02-09 11:10) 

YumYum

昨日、小一時間でスラリと読ませて頂きました。
引き込まれる文ですね。これはいい!
島の人の話がよかった。
『天使が空から降りてきて美しい音楽を奏でようとしているときに〜』
という以下のお言葉。
どんな宣伝コピーよりも、アイラのシングルモルトが飲みたくなる決めぜりふだわ。
by YumYum (2006-02-11 23:37) 

ニライカナイ店主

YumYumさんへ>
ナイス&ご来店ありがとうございます。
そうですね、ストレスのない、あるいはストレスをアルコールで溶かしてくれる
ような1冊だったのでは?行って飲みたくなるのがこれまた困るんですよ。
ちょっと行ってきます、と行ければいいんですけれどね。
身近に置いて、眠れない夜などにちょっと読んでリラックスするのに
良い本なんですよ。緑も目にやさしいし。
by ニライカナイ店主 (2006-02-12 09:51) 

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