恩田陸は性善説作家？「光の帝国 常野物語」 [ミステリーを楽しみたいときに]
「光の帝国 常野物語」 恩田陸 ２０００年９月集英社文庫（１９９７年初版）
恩田作品、２作目。たしか、はりなたるさんがお薦めしてくれたのがこの作品だったと思う。
読み終わって、いやな感じのしない本を読むのはこのごろ貴重なことになってしまった。
得るものはあっても、読後感ににごりや嫌な思いが残るものが多かった。
この作品は、作者自らがあとがきで書いているように、やや連作としては途切れる部分がある
ものの、最後まで前のめりで気持ちよく読むことができたその「貴重な１冊」であった。
この読後感の違いは何なんだろう、と考えている。
ホシさんが言っていたように、もともとが「性善説」なのか、そうでないのかの違い
なのだろうか。あるいは、そうなのかもしれない。
いずれにしても、人間をいつくしむ心のある作家の作品には、そのことが表れる。
この作品は、常野、という宮城にあるらしいある集落に住んでいた、それぞれ特殊な力を持った
人々の話である。将来起きることが見える、「飛ぶ」ことができる、遠くの出来事がわかる・・。
短編集なのだが、ひっくり返しなから読んでいくと、少しずつ話がつながり、「常野」というところに
集結していく。常野―それは場所であり、特別な「力」を授けられた人々のことを示す。
短編の中には、「常野」の人々が戦争時にどんな目にあったか、ということが、
ある切り口で書かれている。
その後、ちりぢりになった「力」を持つ人々、そしてその子孫たちは、様々な場所で力を隠しながら、
あるいはさりげなく力をいかしながら、あるいは封印されたまま、生きている。
その「力」を受け入れるまでの様々な生き様と、これからその人たちがどうなっていくのか、
という期待感が本作品にあふれている。
この本はシリーズものなので、続く作品を読むのも楽しみである。
恩田さんは宮城の出身のようだ。
私も縁があって、宮城に親戚がいる。あそこは仙台の市街地を一足出ると、本当に自然豊かで、
さらに海岸側と山側では全く雰囲気が違う。
今度訪ねたときは「常野」を探してしまいそうだ。
決して目には見えないであろう「常野」を。
＜Amazon.co.jp へのリンク＞
※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。
- 作者: 恩田 陸
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2000/09
- メディア: 文庫
後味のよい読書がいいですよね～。
わたしはいつもそんな本を探しているような気がします。
最後に希望や夢を感じれる読書がしたいです。（＾－＾）
by 武田のおじさん (2006-02-23 20:22)
読書後ニマニマと幸せにな気分になれたり、ちょっとの間異世界にトリップできたりする作品っていいですよね。
恩田さんのシリーズものですか、チャレンジしてみようかな。
by トム (2006-02-23 21:39)
武田さんへ＞
コメントありがとうございます。この作品は、きっとそんな一冊になると
思います。ぜひ、お時間のあるときにご一読を。
私も、できるだけそういった本をご紹介していければ、と思っています。
by ニライカナイ店主 (2006-02-23 23:58)
ホシさんへ＞
ナイス＆ご来店ありがとうございます。
この本は、ひと時異次元世界あるいは異文化世界に引き込まれるような
感じがします。そちらの世界が本当なのでは？と思うような。
基本的に、苦しくても前向きになろうと努力する登場人物が出てくるものに
私は弱いですね。ついプッシュしたくなります。私もこの後の話を読んでみよう
と思っています。ぜひ、ごいっしょに。
by ニライカナイ店主 (2006-02-24 00:01)
おはようございます。
コメントが遅れ気味のはりなたるです（＞＿＜）
やっぱり慣れるまではいろんなことにばたばたしてしまって、NZの頃の様にパソコンに向かえませんね（←向こうでは向かい過ぎ。。。でしたが）
すでに刊行されている常野の他の話も読んでみたいとは思いつつ、まだ手が出せていません。。。読みたいのに。。。（＞＿＜）
by はりなたる (2006-02-26 09:03)
はりなたるさんへ＞
ナイス＆ご来店、ありがとうございます。
日本に慣れるまでは、少しいろんなことのペースが落ちても仕方ないですよ。
まだ「外国」に来てしまったような気がしていたりして（笑）。
この作品、本当に続編が楽しみですね。図書館リクエストまちです。
他にも山のように読みたい本、読むべき本があるので、いいタイミングで
順番がくるといいなあ、と思っています。
くれぐれも、焦らずに。本は楽しくよまなければ意味がないですよ！
by ニライカナイ店主 (2006-02-26 22:16)