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やっと読みました 「東京奇譚集」 村上春樹 [人生や物事について考えたいときに]


「東京奇譚集」 村上春樹 2005年初版 新潮社

久しぶりに、何度も読んでみたい本と出合えた、と思った。
もともとひいきにしている著者だからではない。
今の時代に、今の私に多分フィットしているからだと思う。
砂に水が吸い込まれるように読んだ。

この作品集は5つの短編集からなっている。
それぞれ、好きな場面もあり、気づかされる言葉がある。

たとえば、「ハナレイ・ベイ」では、息子を失った母が若者に言う言葉。
「楽しめるときにめいっぱい楽しんでおけばいい。そのうちに勘定書きがまわってくるから。」
このセリフは心にずしん、ときた。
心当たりがあるからか?

「品川猿」も、「名前」がテーマになる。ゲド戦記とも繋がるテーマだ。
特に、女性は結婚で名前が変わるし、そういう意味でも主人公が女性であったことは
なんとなく深追いしようと思えばいくらでもできそうだ。

しかし、一番私が気に入ったのは最初の一編「偶然の旅人」だ。

これは、ちょっとした偶然と思いがちだが、実は私達の周りじゅうにいつも示唆されている事々で、
ただ私達が気が付かない多くの「知らせ」であったり、「求め」であったり、「気づき」があり、
それに気づいて行動に出たとき、結果を見て「どうして?」と不思議に思う。
「そんなバカな」、と驚いたりする。
でも、私達が気が付かないだけなのかも、と思わせる話だ。

この話の中にも、登場する魅力的な男性の気になるセリフがある。
「かたちのあるものと、かたちのないものと、どちらかを選ばなくちゃならないとしたら、
かたちのないものを選べ。それが僕のルールです。」

うーん、かたちのあるものとないもの。

こうやって考え込みながら、またも読み返す楽しい夜長は続く。

<Amazon.co.jp へのリンク>
※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。

東京奇譚集

東京奇譚集

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/09/15
  • メディア: 単行本


nice!(4)  コメント(9) 
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コメント 9

歩林

あー。この本、興味あるかもです!
かたちのあるものと、ないものかあ。うーん!
by 歩林 (2006-03-15 19:24) 

ニライカナイ店主

歩林さんへ>
ナイス&ご来店ありがとうございます。
この本、あっという間に読めてしまうのですが、何度も読みたくなる
不思議な本です。この本と出合ってからずっと、かたちのあるものと、ないもの。考え続けています。ぜひ、お薦めです。
by ニライカナイ店主 (2006-03-16 12:31) 

「かたちのあるものと、かたちのないものと、どちらかを選ばなくちゃならないとしたら、かたちのないものを選べ。それが僕のルールです。」

初めて呼んだとき、私もこの言葉にとても感銘を受け、手帳に書き写しました。
そして、自分が何かに迷ったり、間違いを起こしそうになっとき
必ず、心の中で唱えるようにしています。

例えば、ですが、人間は欲の塊ですよね(一般的に)
その欲を満たすために、ヒトは何らかの選択をしながら生きている。
でも、それは果たして正しい選択なのか?
ヒトを傷つけないか?
など、考えるとき、私は「有の行動」より「無の行動」を選ぶようにしています。
結果、いい方向にいってますよ^^
by (2006-03-16 12:46) 

玉漣。

こんにちは。
私も読みましたよ(^^)♪
この短編は、味わい深いです。
まるで美味しいコーヒーを取りそろえた、
何度でも訪れたい深みを感じるカフェのようです。

「かたちのあるものと、かたちのないものと、どちらかを選ばなくちゃ(後略)」
難しいですね。
私は結局のところ、「かたちのないもの」に何らかの「かたち」を無理に与えて、選択している気がするので(^_^;)
by 玉漣。 (2006-03-16 18:13) 

ニライカナイ店主

ねこばすさんへ>
ナイス&ご来店ありがとうございます。
私もまだ、はっきり答えは出ていません。でも、ねこばすさんの基準もひとつの
答えだと思いました。もしかしたら、その基準を村上氏は読者それぞれに
考えてもらいたいのかもしれませんね。
by ニライカナイ店主 (2006-03-16 22:57) 

ニライカナイ店主

玉漣さんへ>
ご来店、ありがとうございます。私も、やはり彼は短編がいい、と再確認した
この一冊でした。エッセイもいいし、もちろん長編もいいのですが、ひさびさに
何度も読みたくなりました。その点ではあなたの感じたとおりかもしれません。
何をもって、形とするか。これを読者に考えさせたいのかな、と思います。
強制的にではなく、そこに共鳴する人にだけ。共鳴し続ける私はいまだ
答えは出ていません。考え続けるのも一つの楽しみかとも思います。
by ニライカナイ店主 (2006-03-16 23:00) 

ニライカナイ店主

youさんへ>
ナイス&ご来店ありがとうございます。
最近はナイスだけだとどこに付けていただいたかわかりにくくなってしまいましたね・・・軽くするための苦肉の策なんでしょうが。またあそびに来てください。
昨晩は奥様の書いたブログを拝見してきました・・・ってご存知ですよね(汗)。
by ニライカナイ店主 (2006-03-20 09:48) 

はちみつ

はじめまして^^
村上春樹さんの短編集は好きなのですが、この本が出版されているのをこちらのブログを読むまで知りませんでした。
ふむふむ。面白そうですね。
村上さんの本に出てくる言葉は、読んでから何年も経った後に、あの言葉はこういう意味なのでは!と、突然思い出したりするので好きです。
人生に寄り添うような小説を書ける作家さんですよね。
さっそく買ってきます^^
by はちみつ (2006-03-24 12:25) 

ニライカナイ店主

はちみつさんへ>
ナイス&初のご来店、ありがとうございます。
村上さん(知り合いのようですね)は、時々短編集の中にぞっとするくらい
心に密着するような作品が出てきます。私はエッセイも好きなので、
「小確幸」ということばも好きです。詳細、過去ログの「うずまき猫・・」に
書いてありますので、お時間があったらごらんください。
はちみつさんも小説を書いてらっしゃるんですね。今度ゆっくり遊びにいかせて
ください。
by ニライカナイ店主 (2006-03-26 15:18) 

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