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残された者の中に生き続けるもの「愛と死をみつめて終章もうひとりのミコ」 [人生や物事について考えたいときに]


「愛と死を見つめて 終章 もうひとりのミコ」 河野実 2005年初版 大和書房

先日、昭和38年に出版された、若くして亡くなった女性とその恋人との書簡をそのまま掲載した
「愛と死をみつめて」(http://blog.so-net.ne.jp/bookcafe-niraikanai/2006-03-07)を紹介した。

今思うと、その女性、大島みち子さんが書いた日記「若きいのちの日記」を先に読んだほうが
よかったかもしれない。
というのは、この作品は、最近になって彼女の恋人であった「マコ」こと河野氏が書簡と
彼女の日記だけでは埋められなかった部分を補足するために書かれている側面があるからである。

しかし、これを読んでみると、書簡の前後のことがマコの視点から書かれていて、
その時の二人の心理面、物理面での状況が大変よくわかる。
ひとつの記録として、書簡だけではわからなかった部分をしっかりと支えている。

二人が出会った頃のこと、マコ(河野氏)とミコ(みち子さん)の育った環境、そして実家の場所や
家族の様子の違いから、二人がどんな人物だったのかが浮き彫りにされる。

マコがどうしてミコとずっと一緒に病院にいられなかったのか、(書簡だけでを読むと、実家に帰る
くらいなら、大阪の病院に行ってあげればよかったのに、とも感じられてしまう)、
ミコがジャーナリストを目指していた真意やその気高いまでの自立した心の様子、
それでもやはり一人の女性としての幸せを抱きたいと思った瞬間。

死を覚悟した時の二人の状況は、この本を共に読むことでひしひしと体に伝わってくる。
字面だけでは表現しきれない思いがそこにある。

40年以上の歳月が流れて、一つの物語のようにまとめられてはいるが、河野氏の心の中には
常にみち子さんがあの頃のまま強い精神をもって、時には耐え切れない苦しみをこらえながらも
いまだ生きているのではないか。

生きるということ、生きようとすること、
それがかなわない運命、それを知って共に居る残される人々。

私達は今、いったいここから何を感じ、学ぶべきなのだろうか。

そういえば、私は、書簡集である「愛と死をみつめて」の説明書きに、
「今も残る大切な形の無きもの」と書いた。

奇しくも、前回村上春樹氏の最新短編集を紹介して以来ずっと
かたちのあるものとないものとは?と考えている途中であったことに
今更ながら気が付いたのである。
これも奇譚集のなせるわざなのか?東京ではないけれど。

<Amazon.co.jp へのリンク>
※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。

「愛と死をみつめて」終章

「愛と死をみつめて」終章

  • 作者: 河野 実
  • 出版社/メーカー: 大和書房
  • 発売日: 2005/12/17
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


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