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映画はどうだろう?   「ダ・ヴィンチ・コード」 [ミステリーを楽しみたいときに]


「ダ・ヴィンチ・コード」 ダン・ブラウン作 越前敏弥訳 
角川書店 2004年初版(2006年文庫化)

遅まきながらこの作品を読んだ。
友人に借りて読んだのだが、その友人は貸してくれたときに私が「ヒストリアン」を読んだ
直後であることを知っていたので、「それと比べればあっという間に読めるはず」と評していた。

たしかに「ヒストリアン」に比べればわかりやすい構成
(物事の起こる順番はほぼ時間の流れどおり)だし、登場人物たちも概要は
対立する二つの団体とその真ん中に立たされた宗教象徴学者、という構図だ。

ただ、ちょうど数独にはまっていた私は暗号解きにかなり「ひっかかって」しまった。

物語のキーとして読んだら流してしまってもかまわないのだが、
言葉遊びのような暗号にはまってしまって、結構時間をかけてこの本を読むことになった。

言葉、サイン、絵画、様々な暗号がツールとして登場する。
それらを頭の中でなんども転がして味わっているうちに、結局何冊かのまったく別の本を
挟みつつ、結局読み終わるまでに時間がかかった。

宗教的暗号、象徴、宗教美術、そしてキリスト教の根本にかかわる問題が
ちりばめられた作品だ。

多くの方がもう読まれていてご存知とは思うがこの作者ダン・ブラウンだが、
父は数学者、母は宗教音楽家ときた上に、妻は美術史研究家であり、画家でもある。
こうした環境がこの作品のパーツや構想に大きく影響していることはいうまでもない。

最初、映画化において誰が誰の役をやるのか知ってしまった上で読み始めたこと、
さらに映画のPRがかなりモナ・リザという作品に重点をおいてつくられていたことから
かなり先入観がはいってしまうのだが、これから読む方はぜひそれらを忘れて
純粋な気持ちでこの「謎解きのアドベンチャー」の門をくぐって欲しい。

モナ・リザに関わる謎だけでなく、ダ・ヴィンチをはじめとする
多くの優れた頭脳をもっていた人々に関わる物語として描かれているのだから。

「ヒストリアン」を読んだときもそうだったが、宗教に関する自分の知識がもっとあったなら、
更におもしろかったろう、と思う。
さらに、私はあのルーブルが立て直される前にしか訪ねていないので、
最後のクライマックスにおける感動を想像でしか感じられないのが大変残念だった。
(これはCMでも描かれているのでネタバレにはならないだろう)

日本では宗教、特にキリスト教の正しい流れを広範に知ることはなかなか難しい。
たとえキリスト教に触れたことがあっても、他の流派の考え方、
さらにはそれが別れてきた道筋まで学ぶ機会はなかなかないのではないか。

そういう意味で、この作品を楽しむには、キリスト教の宗教観、その流派と分かれてきた道筋、
西洋史、そして美術史と美術そのもの―できれば本物を見ておきたい、というのが本音だ。
そんなことは贅沢で、できる人は限られているだろう。

また、教会や美術館を実際に訪ねるということも、簡単にできるわけではない。
ただ、もしそれができれば、二倍、三倍と楽しめるのであろうし、
その部分をフォローできるのが映画なのではないか、とそういう意味で少しだけ期待をする。

物語の中で、最も切ないのは実は家族の物語であるような気もする。
祖父と孫娘。
あまりここで書いても未読の方もいらっしゃるので遠慮するが、
重い秘密を命さえかけて守らねばならなかった祖父が孫娘に託す思いと秘密。
その切なさが美しく、悲しい。
しかし、最後には救いもある。

途中からスピードアップする謎への疾走に息を切らして共に走る喜びを感じて欲しい。

<Amazon.co.jp へのリンク>
※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。

ダ・ヴィンチ・コード(上)

ダ・ヴィンチ・コード(上)

  • 作者: ダン・ブラウン
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2006/03/10
  • メディア: 文庫


ダ・ヴィンチ・コード(中)

ダ・ヴィンチ・コード(中)

  • 作者: ダン・ブラウン
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2006/03/10
  • メディア: 文庫


ダ・ヴィンチ・コード(下)

ダ・ヴィンチ・コード(下)

  • 作者: ダン・ブラウン
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2006/03/10
  • メディア: 文庫


nice!(6)  コメント(13) 
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コメント 13

歩林

よみました!おっしゃるとおり、もっと宗教とか歴史的背景とか、わかっていたらよりいいんだろうなと思いました。
ちょっと、映画が楽しみだったりします。
by 歩林 (2006-05-20 09:10) 

ニライカナイ店主

歩林さんへ>
ナイス&ご来店感謝です。そうなんですね、どうしても日本にいると
そういう背景がわかりずらい・・・ただ、読んでいれば、きっと映像が
カバーしてくれるところ(行ったことのない教会などを見ることで)も
あるのでは、と、そういう意味で映画に期待をしている私です。
by ニライカナイ店主 (2006-05-21 15:06) 

こんにちわ。
この手の本(宗教が関連する本)は、日本人の文化的に
完全に理解出来る人って少なそうな感じがします。
が、特定の人物にとって大切なものを探すと言った部分では
普通の冒険ものを連想すれば、案外すんなりと読める気もします。
本ではスピード感があってあっという間に読んでしまったのですが
映画はと言うと。。。。結構好みが分かれるところだと思いました。
by (2006-05-22 08:10) 

ニライカナイ店主

norizo!さんへ>
ナイス&ご来店ありがとうございます。
私も実はこれをアップした後、映画観て来ました。ちょっと違うところは
なぜそうしたのかな?と今つらつら考えています。映画としては、
うーん、観光ツアーにいくよりはよかったかな?ということと、思ったより
オドレイ・トゥトゥがしっかりした役づくりをしていた、というとこでしょうか。
by ニライカナイ店主 (2006-05-24 23:04) 

くっしー

こんにちは!ニライカナイ店主さん、ごぶさたしています(^^)。
私もダ・ヴィンチ・コード読み終えました。
一番切ないのは家族の物語、というのはすごくよくわかります。謎ときや宗教観や美術の世界についてグイグイ引っ張られて読みきった感がありますが、一番心に残ったのは家族についてだったように思います。最後の救いがなかったらズーンと凹んだかもしれませんね(笑)。そこのくだりがあったことで、一気にこの作品が読む価値あったなと思わせた気がします。
オドレイ・トトゥのしっかしした役作り、楽しみです♪
by くっしー (2006-05-25 22:35) 

ニライカナイ店主

くっしーさんへ>
ナイス&ご来店ありがとうございます。本当にそうですね。
やはり物語にはどんなに厳しい内容でもどこかに救いが欲しいものです。
これから映画を見られるんですよね。本と少し内容が違っているところも
ありますが、またそれは後日機会があったら議論したいところです。
by ニライカナイ店主 (2006-05-27 15:33) 

YumYum

なるほど、スピード感があるのはいいですね。
ベストセラー敬遠派の私もあれだけ宣伝され、本屋にうず高く積まれると(しかも三冊に分けたことによって一冊が薄くて読みやすそう)つい食指を伸ばしたくなっておりました。うーん、やっぱり面白そうですね。読もうかな。
by YumYum (2006-05-27 18:21) 

ニライカナイ店主

YumYumさんへ>
ナイス&ご来店ありがとうございます。私も多分、友人に借りることが
できなければ今、読んだかどうか・・・とちょっと思うところもあります。
ただ、書いたように新しくなってからのルーブルを見たかったので
(出来た当時いろんな意見のあったピラミッドを特に)、映画を見る前に
ぜひ、と思ったので、先に読みました。
また、ヒストリアンを読んだあとでもあり、少しキリスト教の流れを追って
見たいと思ったことも理由の一つです。
が・・・まあ、あまり小難しいことはいわず、エンターテイメントとして
お読みになるのがよろしいかと・・・。
きっと、ちょっと周りに声をかければ誰かもっていると思います。
買わなくても、すぐ読めると思うので借りられる人がいればそれでもいいと
私個人は考えます。厚みもまさに丁度持ち歩きによろしいサイズです。
(うまいな、角川、と思いませんか?)
by ニライカナイ店主 (2006-05-28 15:42) 

お久しぶりです!
やっと、復活~!です。
私も、『アッ』と言う間に読みました。昔、中学生の頃に流行っていた
シドニィ・シェルダンを思い出しました。はまったな~(笑)

ダヴィンチコードは中身が面白かったから、良かったです。
歴史的背景をもっと勉強しようと思ったし!

映画は・・・見ましたが・・・・見ました?
by (2006-06-02 12:49) 

ニライカナイ店主

ねこばすさんへ>
ナイス&ご来店ありがとうございます。映画も見ましたよ。
ネタバレになるのでなかなか書けませんが、本を先に読んでおいて
よかったかな?というところでしょうか?
よかったのは、実は最近とんと海外に行っていないので、ルーブルも
例のピラミッドができる前にしか行っていないし、イギリスのロスリンにも
とてもいけそうにないので、そういう意味で、ロケーションを見られた、
という点はよかったかな、と思います。
映画内容についてはまたねこばすさんのブログあたりで・・・。
by ニライカナイ店主 (2006-06-03 13:19) 

さわこ

映画と原作、どっちが先がいいかって結構悩むところです。
あたしも「ベストセラー敬遠派」で、騒ぎが落ち着いて
それでもまだ興味があったら読もうかな・・・とか思ってたんですが。
宣伝の先走りではなく本当に面白いみたいですね。
読む気になりました。
by さわこ (2006-06-04 13:59) 

ニライカナイ店主

さわこさんへ>
初のご来店&ナイスありがとうございます。
こちらは、先読みでオーライ派がどうも周りには多いようですが・・・
私の周りだけかな?確かに、ベストセラーはちょっと・・・と思いますが、
そういう本こそ先に読んで自分のイメージを確立してからのほうがもし映画を
見るなら良いような気がします。役者をされているとのことなので、その場合
はどうなのでしょうか。一読者、一観客としては、これに関しては先読みして
良かった例です。後読みでよかったもの(「フライトプラン」)や、後で読むしか
なかったもの(「ハウルの動く城」)などもあるのでモノによるのかな、と
思います。
by ニライカナイ店主 (2006-06-04 19:52) 

おはなし村ゆめ

ニライカナイ店主様、お元気ですか?
私は、最近、仕事が忙しくなって、なかなかブログをかく元気がないの
ですが、週末に、ダヴィンチ・コードの映画を見てきました。
賛否両論あるみたいだけど、私は、とってもおもしろかったです。
もう一度観たいですよ。でも、ダヴィンチはじめ、その当時の知識人
って、本当に頭が良かったんだなあと、ちょっと、別な意味でも
なんだか、考えさせられてしまいました。
by おはなし村ゆめ (2006-06-07 23:25) 

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