恩田陸おそるべし 「木曜組曲」 [ミステリーを楽しみたいときに]
「木曜組曲」 恩田陸著 徳間文庫 ２００２年初版
これは、先にたまたまＤＶＤで映画を観ていた。
その映画を観て、「ほほう～」と思ったとともに、多少疑問あるいは考え直してみたい点が
あったので、原作を読んでみた。
ほぼ原作と映画は同様なのではあるが、原作を読んでみて驚いたのは
その原作がまさに脚本用であるかのような構成で書かれていることであった。
ある過去の出来事に由来する「ある木曜日」に集まった４人の女性と受け入れる１人の女性。
その５人の女性たちが織り成す「過去の出来事」に対するわだかまりは、
その後しばらく表面上隠されていながらくすぶっていた過去の疑問とともに、
あることをきっかけに爆発するのだ。
女、しかも物書きに携わる女性５人の何重にもかけられた薄いベールのようなトラップ。
暗い過去の話と並行しながらもおおいに飲み、おおいに食べる女性たち。
そのたくましさと、複雑さ、美しいまでの自己愛、
そして敬愛とも尊敬とも怖れともいいがたい今は亡き大作家へのそれぞれの思い。
ふと、先に本を読んでいたらどうだったのだろう、と思う。
配役の先入観もなく、この複雑にからまって、何度もひっくり返る真実。
いや、真実は本来一つなのかもしれないのだが、この著作に関しては、
それぞれの登場人物によってその真実は変容するのだ。
何か真実なのか、なんて問題ではない。
自分がどう理解するか、
自分にとって過去の出来事がどうかかわり、今後の自分にどう影響するのか・・・・
それこそが彼女たちのターゲットなのだ。
ミステリーのような、女性たちの生き様を描いたハードボイルド小説のような。
そんな不思議な原作である。
そして、映画なのだが。
これは原作を読んだ今でもすばらしいキャスティングだったと思う。
この人にこの女優をあてはめずに、ほかに誰を？というような、
まるで映画のために描かれたかのようなズバリその人があてはめられている。
また、演技も、舞台も、小道具も、すべてがこの作品とまるで勝負をするかのような
できの良さである。
まだどちらかしか接していない方、どうかもう一つの「木曜組曲」と出会って欲しいと思う。
どちらが先？といわれてたら、私個人は先に原作を読んでおきたかったが、
映画を観たからと言って、原作を読んだ意味がなかったということは決してない。
この原作は１９９９年１１月に書かれている。
恩田陸、おそるべし。
もっと、こうした大人を主人公とした本格心理ミステリーにトライしてもらいたい、と願うところである。
- 作者: 恩田 陸
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2002/09
- メディア: 文庫
- 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
- 発売日: 2003/05/23
- メディア: DVD
おひさしぶりです！
木曜組曲。なんだかおもしろそうですね。インプットしておきます。
映像になっているというところも興味がわきます。
荻原浩 著「神様からの贈り物」にひきつづき
最近は、「僕たちの戦争」を読んでいます。
こんどTBSでドラマ化されるようでその前にと思って読みました。
どんな映像になるのかが楽しみです。では、また！
by 歩林 (2006-09-04 20:02)
歩林さんへ＞
ナイス＆ご来店ありがとうございます！
ドラマ化される前に読んでおきたい、という気持ちが私も強いです。
それから見たほうが楽しめるような・・・自分なりのイメージも
もちたいですしね。この「木曜組曲」は両方お薦めです。ぜひ！
by ニライカナイ店主 (2006-09-06 20:03)
ご無沙汰してます。
「木曜組曲」はＤＶＤが出てすぐのころ観ました。
加藤登紀子さんを敬愛するあたしとしては押さえるべき!!って。
で、しっとりとして、しっかりとして。
好きな作品です。
紹介されてうれしく思います。
でも恩田陸さんの作品だといま気が付きました。
ちなみにただいま「夜のピクニック」を攻略中です。
by さわこ (2006-09-13 03:45)
さわこさんへ＞
ナイス＆ご来店ありがとうございます。
この作品に限っては、先に映像でみたことはよかったと今は判断
しています。すごいメンバーだし、あの人たちの個性をうまくぶつからせながら
さらにうまく展開させている。「夜のピクニック」はこれと比べるとかなりヤング
アダルトまたはそれに近い気持ちの人たちに向けてのオマージュのような
気がします。とても同じひとが書いたとは思えないんですけれどね（笑）。
by ニライカナイ店主 (2006-09-19 17:10)