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さらに少女王の成長を追う 「風の万里 黎明の空」小野不由美 [物語や絵本の世界を楽しみたいときに]


「風の万里 黎明の空」 小野不由美著 講談社文庫 2000年

出版順では十二国記シリーズの五作目にあたるが、十二国の年代順でいくと
以前紹介した「月の影 影の海」つまり、陽子が慶国王になった後の話になっている。

陽子は王になって徐々に王宮のシステムには慣れてきたものの、
いったい自分が何をすべきか・・・
特に、自分が王となって初めて出す法令=初勅をいかにすべきか、
この国をどうすべきか、自分はどう王としてふるまっていくべきなのかに迷う。

王宮では、日本でいうところの内閣のようなもの、
昔で言えば家老や老中のような者たちがいて
実際は以前の王たちが決めたそのものたちが国を動かしていた。

変わり初めっていた陽子は、市井の庶民として自分の国の様子をさぐるべく、
ひそかに王宮を離れる。そこで眼にしたものは・・・。

             *************
とにかく、登場人物が多い。あえて出版順に読んでいないため、
物語の展開で理解が足りなかった点もある。
いくつもの人物、人脈がからみあって、どう最後に収集がつくのやら、と思っていたが、
一応の予定調和には落ち着いた。

最後のほうで、巡り逢うべくして巡り合った
同年代の様々な境遇の少女たちが語り合う場面がある。
そのシーンも含めて、前作以来、「自分はどういう存在なのか」という自分探し、
自分の居場所探しのテーマは引き継がれている。
この点においては、やはり大人向けというよりは、少年・青年向けだと思う。
やわらかい悩める心には、きっとこの点が響くに違いない。

やや筋肉質になった(あえて贅肉とはいうまい)大人にとっては、
後半の展開の速い戦国ファンタジーといえるのではないか。
あるいは、若い、特に少女の気持ちを理解したい保護者にとっては
新たな発見があるのかもしれない。

いずれにしろ、この架空の世界を破綻なく構築していく力はなかなかのものと思う。

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※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。

風の万里 黎明の空〈上〉―十二国記

風の万里 黎明の空〈上〉―十二国記

  • 作者: 小野 不由美
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2000/10
  • メディア: 文庫


風の万里 黎明の空〈下〉―十二国記

風の万里 黎明の空〈下〉―十二国記

  • 作者: 小野 不由美
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2000/10
  • メディア: 文庫


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コメント 2

YumYum

十二国記ですか。
NHKのアニメで(しかも、飛び飛びに)見ただけですが、
独特の世界観と摩訶不思議な生物描写にかなり引かれました。

読みたいと思いながらも、図書館ではいつも貸出中。人気なのですね。
by YumYum (2006-11-02 23:11) 

ニライカナイ店主

YumYumさんへ>
ナイス&ご来店ありがとうございます。NHKで、しかもアニメでやっていた
とは全く知りませんでした。もともとYA系には明るくないのですが、ある雑誌
でこれはおもしろい、大人もはまる、とあったので読んでみました。
壮大な大作で、ある程度読書力のある特に女子高生あたりにはきっとかなり
魅力的なのでは、と感じています。人気は確かにあるようですよ。
by ニライカナイ店主 (2006-11-03 01:32) 

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