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政治を現場で見た記者の目 「総理大臣の器」 三反園訓 [人生や物事について考えたいときに]


「総理大臣の器」 三反園訓著 講談社+α新書 2006年

表紙に渋い茶碗がひとつ。
本阿弥光悦作「黒楽茶碗」である。

テレビ朝日のニュースで著者の三反園氏を始めて意識して見たのは、
おそらく久米氏がやっていたニュースステーション時代に国会記者クラブに詰めていた頃だと思う。何か政治に動きがあると、この三反園氏が現れるのである。

何の事件のときだったか(あるいは政局のときだったか)、
久米さんが「三反園さん、しばらく家に帰ってないんじゃないですか?」と投げかけたのに対し、
「はい、もうずいぶん帰ってません」と答えながら、その表情は精気にみなぎっていた。
ネクタイはよれよれで、昨日見たものと同じものであったけれど。

その三反園氏もテレ朝のニュースコメンテーターとなり、
今は現場よりもスタジオにいる姿をみることの方が多い。

しかし、この人は現場で様々なものを見、いえないことも聞き、
1980年代から今までに至るまで政治の表も裏もジャーナリストとして生きてきたのであろう。

その一つの区切りとしてまとめられたのがこの作品である。

この作品は、現在の安倍首相が決まる直前にかかれたものではあるが、
もうこれで決まりだろうということを前提に書かれている。

小泉政権と将来想定される(当時は)安倍政権において、
それぞれの総理としての品格と器について語られている。

また、その対抗馬の筆頭として、小沢氏についても今までの歩み、展開、
そして今が描かれている。

更に、中曽根元総理および重松清氏、丸山弁護士との対談による
現在におけるあるべき総理の品格と器についてもなかなかおもしろい。
この三人を選んだというところがまた絶妙なのである。
まったく異なる角度からの切り口で、現在の、また、過去の首相の力量について語られている。

特に、中曽根氏との対談はなかなか貴重な内容であり、総理大臣に必要な要素を語っている。
4つほど具体的に上げているがそれは本書で目にしていただくとして、三反園氏が対談から
聞きだした中曽根氏の意見として、政治家には「凄みと渋み」が必要だという。
その渋みは自らが養わねば決して手に入らないものである。

さらに、戦後日本における個性派首相―吉田茂氏、佐藤栄作氏、田中角栄氏についても
分析し、論じている。

三反園氏の持論は、「誠実・慈愛・正義と勇気・耐えること・思いやりの心をもった人に
総理大臣になってほしい」というヒーロー論である。

一見、そんなばかな、と思うかもしれない。
しかし、文中にもあるように総理大臣は、日本にただ一人なのだ。
その重責と期待に耐えられる存在はヒーロー以外の何ものでもない。
そんな本当のヒーローを生み出すのは、実は国民一人ひとりなのかもしれない、とふと思う。
なぜなら、国民が政治に対する興味と信頼を持ってこそ、自然と愛国心は育つのであり、
正しい舵取りができるヒーローがいてこそ、日本が本当に世界から尊敬される国になりえると
考えるからだ。

さて、表紙の渋い器は時を経て、何か魂を宿しているようにも見える。
一筋縄ではいかない。それもまた、政治なのか。
人の器とはなんなのか。
ちなみに、その器の名前は「雨雲」である。

<Amazon.co.jp へのリンク>
※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。

総理大臣の器

総理大臣の器

  • 作者: 三反園 訓
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2006/08/23
  • メディア: 新書


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トム

最近政治関係に興味が沸いてきたので少しきょうみがありますが。アマゾンのブックレビューではあまり評価がたかくないのですね。
なやむな~図書館で立ち見でもしてきます。
by トム (2007-01-13 08:46) 

ニライカナイ店主

ナイス&ご来店ありがとうございます。
この本は、実はもっと前に私は読んでいて、今の総理に決まるか?
という頃に読んだのでライブ感もあったのでよりリアルだったのかも
しれません。ただ、政治畑長いの報道人なら、もっと現実的な持論が
あるのかと思っていたら、とても高い理想だったのが新鮮でした。
amazonのレビューも流し読みとか、他の紙面などの評論を見て
書いているものも多いし、好き嫌いもかなり影響するのかな、と思います。
私は比較的好感触でした。潔いし、この著者でなければ聞き出せない
ところまで聞いて書いている。図書館で借りて読むので十分と思います
が、ぜひ手に取ってみてくださいね。
by ニライカナイ店主 (2007-01-13 14:10) 

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