初期の出色ミステリー 「噂」 荻原浩 [ミステリーを楽しみたいときに]
「噂」 荻原浩 新潮文庫 2005年(2000年初版加筆修正・講談社)
荻原氏続きで・・・
久しぶりにあっという間に読み倒した。
荻原浩のミステリー、なかなかのものである。
話は渋谷の女子高生にある「噂」を流して欲しいという意味をふくんだ
アルバイトを発端に、まったく関係のないような事件とクチコミ=「噂」の
伝播力の強さ、マイナスのエネルギー、警察組織のいびつさ・・・等々、
いろいろな要素を巻き込んで進んでいく。
最後に何がどうなるのか。
事件の犯人は誰なのか。
最後まで本当にわからない。
しかも、携帯やネットをかけめぐるマイナスのエネルギー・・・
そう、いじめやいやがらせなど、今考えると2000年当時、よくこのようなことを
想定して書けたなあ、とおどろくようなことばかりである。
なぜなら、多くのことが実際にここ数年のうちに実際に起こっているからだ。
もちろん、事件自体は類似事件は起こっていないが、そのきっかけとなるアルバイト、
そしてネット社会のゆがみはまさに現在をいいあてている。
匿名性を悪用したいやがらせ、無責任な「~らしいよ」というクチコミ・・・噂。
そんな中で、なんとかまっとうに生きようとする
二人の刑事の姿だけが救いである。
このコンビは最初はギクシャクとしてとても不似合いなのだが、
やがて最強のコンビとなる。
お互いがお互いを補い、お互いを認め合う。
しかし、そんなコンビを警察の組織はばらしてしまう。
でも、2人はそれぞれ心の中では固い絆を相棒同士としてもちながら、
それぞれの持ち場で事件をおいつめていく。
悲惨で無責任な事件のすべてが明らかになったとき、
支えになるのは、この2人の刑事の絆だけなのである。
正義と、命を守ろうと、功名も上司への媚びも売らず、
淡々と真実に迫っていく姿こそ、このセンセーショナルなミステリーの核心なのかもしれない。
なにもかもがいやになったとき、この作品を読めば、
もしかしたらこの世の中にも何かいいことが一つくらいはあるかもしれない・・・と
思う・・かもしれない。
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※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。
うわあ。これまたおもしろそうですね。
たくさん読みたい本があるけれど、時間がないですー。
by 歩林 (2007-08-27 22:46)
歩林さんへ>
ご来店&ナイスありがとうございます。
まあ、焦らずに思い立った時にでも手にしてみてください。
先日友人が1年前に紹介した「日々是好日」を最近読んで
感激して遠い地からメールをくれました。
こういうことこそ、このカフェを開いている醍醐味でもあるのです。
本にも読み時がありますよね。コーヒーは入れたてが一番ですが・・。
by ニライカナイ店主 (2007-09-02 01:17)