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ファンタジーの魔力に浸る 「空色のゆりいす」安房直子 [物語や絵本の世界を楽しみたいときに]


「空色のゆりいす」  (「なくしてしまった魔法の時間 安房直子コレクション1」収録)
安房直子著 2004年3月初版 偕成社

目の見えない女の子に空の色を教えたい―「空色のゆりいす」はそこから始まる。

安房直子の作品は、どれも皆甘くはない。
どちらかというと、生きていくことは辛いことの方が多いのかもしれない、と思わせる作品が多い。

子どもの頃、「空色のゆりいす」を読み、なぜ生まれてきた赤ちゃんの目が見えなかったのか、
と悲しく思った。今、大人になって読んでみても、また違った角度でその辛さがわかる。
しかし、安房氏の物語は思わぬ方向に展開していく。

ところで、氏の作品には様々な色が登場する。
おそらく一部の世代の方が教科書で読まれたであろう「きつねの窓」
(猟師ときつねの話。指を青く染める・・・で思い出すだろうか?)もこのコレクション1に
収録されているのだが、特に、「青」という色にこだわっている。
巻末の氏のエッセイでは「一番平凡で」「深くて」「神秘的」な色であり、その色に包まれていると
「心がおちつく」と語っている。

同時収録されている「鳥」も子ども時代に読んだ時、非常に強い印象が残った。
この作品は、ある少女が評判の良い耳のお医者さんのところに駆け込んできて、
耳から「秘密」を大急ぎで取り出してほしい、というところから始まる。
いったい、どんな展開になるのか最初は全くわからない。
最後は不思議だけれど、胸の引き出しの在るべきところにコトンと収まるような幕引きとなる。

安房氏の作品は、いずれも辛い思いや悲しい過去を持った普通の、時に魔力をもった登場人物
(動物)が、様々な体験を経て変わっていく=成長していく物語といえるのかもしれない。
そしてそれは、この世に生きる誰しもに共感を呼ぶテーマでもある。

氏の物語の最後は晴れ晴れとしている時もあれば、悲しいけれど大切な思い出や、
心の支えになっていくものを残している時もある。
それが安房ファンタジーのやさしさであり、芯の強さであるのだろう。

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※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。

なくしてしまった魔法の時間

なくしてしまった魔法の時間

  • 作者: 安房 直子
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2004/03
  • メディア: 単行本


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