「常識」に傷ついた心が開放されていく 「きらきらひかる」江國香織 [落ち込んだときに]
「きらきらひかる」
江國香織 1994年6月初版 新潮社文庫 (1991年新潮社初版)
アル中で躁鬱状態の妻。ホモの医師である夫。
その二人はお見合いをし、二人の間ではすべて納得した上で結婚をする。
そして、夫の恋人の若い男性。
この本が初めて出版されたころに比べれば、こういうことは特にセンセーショナルなことでは
なくなってきている。正しく言えば、いくつかの人間関係のパターンの一つとして認識されることが
多くなってきている。オープンになってきたことは、悪くないと思う。
この本を読んだのが先なのか、映画(妻を薬師丸ひろ子、夫を豊川悦司、夫の恋人を筒井道隆が
演じていた)を見たのが先なのか、覚えていない。
映画もよく出来ていたとは思うが、やはり原作はいい。
こういう関係を変だ、という人もいるだろう。
でも、人はだれでも「欠けている部分」を持つ未完全な存在なのではないか。
そうだとすれば、そのバランスを取るために何で埋め合わせるかが、少し他の人と違うだけで
「変だ」というのはフェアではないような気がする。
(もちろん、犯罪や人の命を脅かすようなものはここでは論外だが)
この物語は、その「欠けている部分」をパターンから見て多くの割合を示すタイプの恋愛や、
仕事のやりがいや、趣味や、ましてや子どもをつくることなどでは埋められない2人が、
自分たちに本当に必要な場所を傷つきながら、壊れそうになりながら、
創り上げていく物語なのだと思う。
自分の居場所に居心地の悪さを感じていたり、普通の結婚と言われているものとのギャップに
悩んでいる方に、一度読んでみていただきたい一冊である。
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※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。
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