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馬と共に成長する少年「ナルニア国物語 馬と少年」 [ナルニア国物語]


「ナルニア国物語 馬と少年」
C.S.ルイス 瀬田貞二訳 岩波書店(少年文庫) 1986年初版

今回でナルニアも5巻目である。全7巻のうち、やっとここまで来た、という気持ちと、
あと2巻しかない、という気持ちが交錯する。
これは指輪物語を文庫で読んでいたときの気持ちにも似ている。

今回の物語は、ナルニアの年代としては、あの4きょうだいがそのままナルニアに残り、
ピーターがナルニア全体の王として納めている時代を背景としている。
物語の順番、その時のナルニアの状況が前後するので、少々混乱しがちだが、
ナルニアでの時間は我々の時間の流れとは違うことを肝に銘じて自分も読み始めた。

今回の主人公は、ナルニアに隣接するアーケン国のそのまたとなり、
カロールメンという国の少年である。
この少年は貧しい漁師の息子なのだが、ある日やってきたお客と父との話を聞いて、
自分が本当はその父の子供ではないことに気が付く。

しかも、その客が乗ってきた馬は、なぜか言葉を話すではないか!
ここまで書けば、ナルニアを読んだ方なら「ふふ~ん」と思われるだろう。
そう、その馬もわけあってナルニアからやってきた馬だったのである。
そのまま居れば、売られてしまうということがわかった少年は馬と共に逃げ出す。
馬になぞ乗ったこともないのに・・・。

少年はその後、ある少女と出会い、ともにナルニアを目指していくことになる。
その中で、王女・王となっているスーザン、エドマンドとも交錯する。
カロールメン、アーケンというナルニア近隣の国で繰り広げられる、
少年にとっては自由と本当の自分を知るための物語となる。
ここでもやはり、ナルニア国物語の根底を流れる、少年と、そして同行する少女の
「成長の物語」が感じられる。

もちろん、アスランも適所適所にあらわれ、それは後になってから少年と少女、
それぞれにアスラン自身から知らされることとなる。

アスランは、子供達に対しても決してやさしい顔だけを持っているわけではないことが、
この巻を読むことでわかる。
アスランは、良き世界のバランスを保つために、時には爪を出すこともあるのである。

そのことを皆さんがどう受け取られるか・・・賛否はあると思う。
だが、アスランは話をする相手にだけ全身全霊を傾けて語りかける。
自分がその相手のために何をどのようにしてきたのか、なぜ、そうしなければならなかった
のか・・・。
それをどう本人がうけとめるか。アスランは相手が子供であっても、しっかりと受け止めることを
信じて、語りかけ、そしてまた姿を消していく。

今、それができる大人はどれだけいるのだろう。

アスランとはどんな存在なのだろう。
様々な生き物のために、その世界のために、平和のバランスを維持するもの?
今、アスランのような存在のもの又は人は存在するのだろうか?

きっと、それは一人ひとりの人々の心の中にあるべきものかもしれない。
ナルニアシリーズを読みながら、最近はそんな風にも私は感じている。

              ********************

映画「ナルニア国物語 ライオンと魔女」を見てきた。本当は全巻読んでから、と思ったが、
ここで見ないとまたいつ見られるかわからなかったので、誘惑に負けてしまった。

内容はほぼ物語に忠実であったと思う。
ただ冒頭の、ロンドンから郊外に疎開するまでのシーンがよりリアル化されていた。
ルーシー役の少女の演技が出色である。

また、CG、SFXもここまで来たか・・・という感があった。
なにしろ、ILMをはじめ、ハリウッドの技術が終結されている。
さらに、クリーチャーたにち見覚えが?と思いつつも、そのデザインのすばらしさに目を
奪われていたが、調べてみると、「指輪物語」のデザインチームが参加していた。なるほど。

映画のすばらしいところは、「視線と表情」だと再認識した。
何度かある裏切り、それによってどういう結果が起こるかがわかっていること、裏切ったもの、
裏切られたものの気持ち・・・言葉がなくても視線と表情でより深く心に響くのである。
喜ばしい気持ち、誇らしい気持ち、命をかけて勇気を奮い立たせる気持ち・・・
そういう気持ちというのは、優れた言葉でなければ表すことはできないだろう。
映画は、いくつもの点で言葉を凌駕するかもしれない。
しかし、それはやはり「こういうときにはどういう気持ちになるのか」「どう演じるべきか」という
言葉によるコミュニケーションの結果なのだと考える。

文字、そして言葉を気の遠くなるような多くのスタッフが受け止め、理解し、
形に表したものが映画となる。
それはその文字と言葉、そして物語がすばらしいほど強く繋がり、広がるのだと思う。

正直に言うと、「指輪物語」によって映像化によるある衝撃の基準は遠い高みまで
行ってしまっていると思う。しかし、「指輪物語」と比べて、もっと小さな子供たちに、
ぜひ見てもらいたい作品の一つになった。
そして、いつか原作を手にしてもらう日がくることを心から願う。

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※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。

馬と少年

馬と少年

  • 作者: C.S. ルイス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2000/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


カラー版 ナルニア国物語 全7巻セット

カラー版 ナルニア国物語 全7巻セット

  • 作者: C.S.ルイス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2005/11/11
  • メディア: 単行本


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コメント 4

くっしー

ニライカナイ店主さん、こんばんは(^^)。
先週やっと1巻読み終わりました~♪すぐに2巻に入りたかったのですが、そう思う人が多いのか、地元の本屋さんでは売り切れ中で(笑)、少し日があくことになってしまいました(^^;。
でも、まだ読める本が6冊もあると思うとうれしい~!!シリーズの良いところは「先があるしあわせ」だと思うんですよね。早く2巻を買わなくっちゃ!
by くっしー (2006-03-07 00:37) 

こんばんは。私は映画を観てきました。
なるほど原作を読んでおられると、着目点が違うというか、
やはりコメントに重みがありますね(ニライカナイ店主さんの
表現力の所為かもしれませんが)。
「視線と表情」といわれて、思い返してみるとなるほどと思います。
原作にほぼ忠実なんですね?少し安心しました^^。
DVDが出たら改めてみてみようかと思います。
by (2006-03-07 01:17) 

ニライカナイ店主

くっしーさんへ>
ナイス&ご来店ありがとうございます。
そうそう、シリーズものは長く楽しめるのがいいですよね。ちょっと中だるみも
ありますが、それが後から「ああ!あのときの!」と繋がる楽しさもあります。
早く2巻目にいけるといいですねえ。
by ニライカナイ店主 (2006-03-07 10:32) 

ニライカナイ店主

springsnowさんへ>
ナイス&ご来店ありがとうございます。私はやはり2000人のオーディション
から選ばれたあのルーシーの力は、視線の力だと思うんです。
ネタバレになりますが、最初にナルニアで友人になるタムナスさんとの視線の
やりとり・・・何度かありますよね。あるいは、エドも、言ってしまってから、それがどういう結果を引き起こすのか、実は気が付いてしまう。それは、周りの空気と視線、表情からなんです。そこでは、言葉よりも映像的には無言の視線と表情、空気が強い力を持っていたのかな、と思うのです。
私が唯一ああ、と思ったのは、最後にナルニアでは大人になった4人を見て、
びっくりしたこと。原作だと結構さらっと書いてあるので、映像で大人になった姿を見せられておおっと思いましたよ~。あたりまえのことですし、映像としてはあそこは大人になった姿を出さないわけにはいかないので仕方ないんですが・・・。心の準備が足りませんでした。こちらの世界ではまた子供に戻るので、何度読んでも原作でも「子供」というイメージしかないんですよ(笑)。
by ニライカナイ店主 (2006-03-07 10:44) 

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