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時にはトンズラもあり! 「うつ病を体験した精神科医の処方せん」 [落ち込んだときに]


「うつ病を体験した精神科医の処方せん 医師として、患者として、支援者として」
蟻塚亮二 大月書店 2005年9月

精神科医でもうつ病になるのか?と思われた方も多いかもしれない。
しかし、多くの忙しい医師たちの中で、抗うつ剤とまで行かなくても、
精神安定剤を飲んでいる人は多い、という。
実際、この本の中にもそのことにふれられている。

実際、プチうつ、という言葉もあるように、今の時代に心身ともに健康、などという人の方が
少ないかもしれない。よほどラッキーでない限り。
しかし、その病気の実態は正しく理解されていないことも多いだろう。

この本は、医師がうつ病、さらには大腸がんになり、その病を経て、あるいは付き合い続けながら
一方患者と向き合いつつ、「うつ」という状態について多方面から書いた本である。
そこが、最近よく出回っているハウツー本風の心理学ものとは一線を画しているのだ。

うつ、とまで行かなくても現在社会で毎日楽しく過ごしている人はそう多くないはずだ。
特に、うつという病気と付き合いながらこの日本で生きていくためには、
「いかに楽な生き方をするか」ということが重要だ、と著者は強調する。
時には、トンズラあり、蒸発あり、手抜きあり、低空飛行あり。

うつになる多くの人が非常にまじめな人間であるため、そうした手段を講じて生き方を変える、
といことは確かに難しいだろう。
しかし、私の読後感としても、自身の考え方としても、「生きていてナンボ」なのだと思う。

「努力が報われる社会でないとうつは治らない」ともあるように、結局マジメ人間が
現状の日本で生き抜くためには、今までの考え方、プライド、「~ねばならない」という気持ちを
すべて一度棚に上げて、自分の本当の大きさ=等身大の自分、というものを眺めてみる必要が
あるのではないか、と思った。

ただ、それは仕事や家事、その他の事柄で忙しかったり、悪いサイクルにはまっているときには
一人でなかなかできるものではない。

この本を読んで、辛いときには無理に我慢せず、世間体などどこの空、精神科でちゃんとした
先生あるいはカウンセラーとめぐり合い、お互いの交流の中で新たな道=新たな自分を見つける
ことがいかに大切なのかを実感した。

そして、休息の重要性。
これは今の社会では本当に困難なことは承知の上で著者も書かれているのだろうが、
ベルトコンベアから一度下りたからといって、死ぬわけではない。
それよりも、生きることを少しでも心から楽しめる自分になりたい、
生きることをいやではない自分になりたい、ということの方が大切なのではないだろうか。

この本には、少々専門的なことも書いてあるが、心理や精神医学に不案内の人でも
著者の人柄からか、気軽に読むことができる。

少しでも多くの人が正しく精神疾患、特に多いうつについて理解し、自分はもちろんのこと、
家族やまわりの友人、同僚がそうなったときに少しでも知識を持っていることで、
いかばかりか本人の助けになることか、と思う。

当の著者は、青森で勤務をしていたが、現在沖縄の病院に「トンズラ」しているそうである。
ややうらやましいような気がする私である。

<Amazon.co.jp へのリンク>
※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。

うつ病を体験した精神科医の処方せん

うつ病を体験した精神科医の処方せん

  • 作者: 蟻塚 亮二
  • 出版社/メーカー: 大月書店
  • 発売日: 2005/09
  • メディア: 単行本


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コメント 10

トム

ふんふんとうなずいてしまいました。
逃げることは決して褒められたことではないですけど必要なときってありますよね、命あっての物種、一生苦痛に耐えるのならいったんリセットして気楽になるのも選択肢の一つ。
最近考えていたことと重なります。
あと精神科医がうつ病になるというのもなんとなく納得したりしてきっと患者に対して責任感を持ってしまう人ほど傾向が強いのでは?
自分が手を抜いたら患者はどうなるとか思うとどんどん自分を締め付けてそうな気が。。。なんかいろいろありますね。
by トム (2006-03-26 21:15) 

武田のおじさん

あれ~?「トンズラ」が羨ましいって?時々「亜空間」に「トンズラ」してるくせに~笑。(←ジョークですよ。)
わたしも時々、いや、最近は毎日のように「ブログ」に「トンズラ」してますね~。
ほんと、「ブログ」は背伸びしなくていいし、こうやって「バカ」言っても平気だしね。(ニライカナイ店主の懐の大きさに助けられてるだけ?)(^^;)
それに、今まで無関心だった事に意識を向けることも出来ます。
だって、植物図鑑なんて今まで真剣に見たことなかったけど、いい加減な記事に出来ないので、必死に写真と図鑑を見比べている自分がいました。
これもまた、今までの日常からの脱却ですもんね~。
それに、ろくに読書もしないくせに、ブック・カフェで遊んでいる。(爆笑)
がはははっ。まいったか~笑。
by 武田のおじさん (2006-03-26 21:49) 

くっしー

ときどき、どうしようもなくブルーになるときは「もしかして自分って“うつ”かも・・・??」なんてドキドキすることがあります。やっぱり、うつに対するいいイメージがないということが、無知さ加減を露呈しているいい証拠だと思うんですよね(--;;;。恥ずかしいことです。
でも、著者やニライカナイ店主さんが書かれているように、ホント、休憩って大事!それでブルーな気持ちが改善ずることって多々ありますし、ちょっとやそっと休んだからといって、長い人生何かが大きくかわるということもないかな~なんて。うーん、これは楽天的過ぎるかな(笑)?
by くっしー (2006-03-26 22:41) 

ニライカナイ店主

ホシさんへ>
ナイス&ご来店ありがとうございます。
結構自分を追い込むタイプ=責任感が強い人ほどうつになりやすいとよくいわれていますが、この本を読んでさらに実感しました。何が自分にとって一番大切なのか。それが仕事のときもあるでしょう。でも、自分あっての仕事であり、仕事はあるとき、自分がいなくなっても回ってしまう、それが組織です。もちろん、自営等の場合はもっと深刻でしょうけれど。それにしても、自分が自分にとってどれだけ大切なのか、そのためなら、人の目などなんてことはない、とこの本の著者は強調しています。そのくらいのインパクトがないと、結局がんばる人はいくところまでがんばってしまう、ということをわかっているからなのでしょう。
by ニライカナイ店主 (2006-03-26 23:42) 

ニライカナイ店主

武田さんへ>
ナイス&ご来店、ありがとうございます。常連ならではのリラックスしたムード、
武田さんならではです。そういうスペースにここを使ってもらえて、店主として
とてもうれしいです。
武田さんにとっては、ブログも大きな「等身大の自分を見つけるきっかけ」であり、カミングアウト(何を?)するステージでもあるんですね。
お互いそういう場をもてたことを感謝したいですよね。
またこのカフェにいらして、等身大の武田さんらしくカップを傾けてくださいね。
by ニライカナイ店主 (2006-03-26 23:45) 

ニライカナイ店主

くっしーさんへ>
ナイス&ご来店、ありがとうございます。
そうですね、自分がうつ傾向かも・・・って私も思いますよ。でも、気がつかないである日ドシンと底の底まで落とされるより、「ちょっとうつ傾向かも・・」と気をつけて自分らしい生き方とか、自分の容量、というものを考えてちょっと抑えておけばいいみたいです。本の中でも、きつかったら、自分がここまでできる、というのを100%とすると、普段は60%くらいで仕事や生活をすればいい、と。
それって、実は一生懸命やってしまううつになりやすい人には難しいことなんですが、多くの人は平気でそれをやっているんです。だから、何も恥ずかしいことではなく、自分を守るためには必要なことなんです。たとえば、こりゃだめだ、という時に休みが取りづらかったら、罪の無いウソでもついてでも休みをとって、きれいな景色を見に行くとか。でも、もし本当に辛かったら、病院に行って、薬を少しもらうだけでもずいぶん楽になるから、もっと気楽に来てほしい、とも書いてありました。なかなか日本では自分のカウンセラーや行きつけの病院を持っている、ということも難しいですけれどね。くっしーさんも責任感の強い方のようなので、そういう道があることもぜひ知っていてください。私は決してそれで偏見などもちませんから。疲れたら、いつでも気軽にここに来てくださいね。
by ニライカナイ店主 (2006-03-26 23:57) 

ai

はじめまして。。本の紹介ありがとうございます♪読んでみたくなりました♪
by ai (2006-03-28 22:11) 

ニライカナイ店主

あいこさんへ>
ナイス&初のご来店、ありがとうございます。
ぜひ、興味があったら読んでみてください。自分のためにも、周りの人の
ためにもなる本かな、と思います。ちょっとふざけているところもご愛嬌。
なんとか現実と事実を伝えようとする著者の熱意が伝わってきます。
by ニライカナイ店主 (2006-03-29 04:24) 

yossui

はじめまして。
ブログ巡りをしていたら、こちらの本の紹介を読みました。

>~今までの考え方、プライド、「~ねばならない」という気持ちを
>すべて一度棚に上げて、~

という文章や、 「武田のおじさん」さんのコメントを読んで、
自分自身、「ブログ」上でも無理して背伸びしていたのかな。
と思ってみたり・・・

ちょっとスッキリしたような気持ちになりました。
by yossui (2006-03-29 23:02) 

ニライカナイ店主

よっすいさんへ>
ナイス&初のご来店、ありがとうございます。
ちょっとふぅ~って一息つけましたか?
この本も、この店に来てくれる皆さんも、本当に味のある方がおおくて、
私もブログ上ではありますが、お会いするのが楽しみなんです。
本が好きだったり、その雰囲気を楽しみきてくれているんだなあ、と
店主としては店を構えたときの気持ちにだんだんブログが近づいてきて、
うれしく思います。
まだまだ店作り中ですけれど、時々遊びに来て、ふぅ~っと一息ついて
リラックスしていってくださいね。いつでもお待ちしています。
by ニライカナイ店主 (2006-03-30 09:34) 

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