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茶道の話から広がる感性を楽しもう 「日日是好日」 [エッセイやマンガでリラックスしたいときに]


「日日是好日 『お茶が教えてくれた15の幸せ』」 森下典子著 
2002年1月初版 飛鳥新社

森下氏といえば、私達の年代(さて、いくつでしょう?)にとって、大学卒業後に週刊朝日で
若い感覚で書かれていると評判になった「デキゴトロジー」を書いている人、という
ちょっとした憧れと羨望の人だった。

少しでも将来マスコミや物書きの道に興味がある一部の少年・少女にとって、
そのコラムは要チェックモノであった。
あるいは若い女性がその目で見た、感じた側面で切り取ったコラムが当時も比較的
硬派であった雑誌に載っているということで、話題にもなっていた。

しかし、この本を読むまで、そのことをすっかり私は忘れていた。
著者はその頃「典奴」などとニックネームをつけていたし、フルネームを覚えていないということは
雑誌では時々読むけれど、まとまったものは読んでいなかったのだろう。

その「ちょっとうらやましい人」のイメージは、このエッセイには全く無かった。

彼女も一時「時の人」になりつつ、その中で悩み、苦しみ、自分を取り戻そうともがいていた
一人であったと知った。

ところで、これは茶道にまつわるエッセイである。

著者は近所の「おばさん」に20歳からお茶を習うようになり、今や25年(四半世紀だ)の
時が過ぎ、教える側に回ってもいるようだ。
毎週土曜日に通う「近所の知り合いのおばさん」の家でお茶を学ぶ中で、このおばさんが
ただものではなく、まごうことなき茶道の先生であることを実感するようになるとともに、
お茶の世界での様々な「気づき」が描かれている。

そういった15の気づきについて、飾らない表現で描かれている。

私のように茶の道に不案内なものにとって、「茶道とは」ということ自体が面白かったとともに、
それにまつわる季節ごとの小道具、そして季節を感じることに新鮮さを感じた。
あるときは季節をやや先取りしつつ、その場に居るものに気づかせる掛け軸や美しいお菓子、
そして茶花の数々は、著者とともにその意味とその場における意義、まるで小宇宙のような
お茶室の世界に引きずり込まれてしまい、これまた一気に読み干した。

このエッセイの中では、当時の学校教育(もちろん昨今までのゆとり教育ではなく、
わからないことはとことん聞いて頭で理解する、という教育)とお茶の作法の学びの違いが
何度となく描かれている。

確かに、この著者とが受けてきた、ゆとり教育以前の学校教育は「他人と比べ」て
成長したかを競う教育だ。

一方「きのうまでの自分」と比べて成長したかを確認することがお茶の世界だと著者は言う。
そこに他人との比較はない。自分自身の問題なのだ。

さらに、季節を大切にすること=今を大切に感じること、今、ここに心身ともに在る、ということが
何度か経験として語られる。
これは、本当に今私達が忘れがちなことだ。

雨が降るといやだなあ、と思う。
でも、そうだろうか?
雨の美しさ、梅雨の雨と秋雨の違いにそれぞれの思いを馳せる。
そういう時間、自分の感性、余白、余裕。
そういうものを今、失っていないだろうか?

先のことをあれこれ考えるばかりでなく、「今」を楽しむ。
「今」を感じる。
これこそ、タイトルの「日日是好日」と深くつながるテーマとなる。

この本も「読み時」のある本だ。
今、自分や生活ペース、生活形態を見直したい、見直す必要のある人がもしこの本を
手に取れば、きっと何かしら響くものがあるに違いない。

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※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。

日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ

日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ

  • 作者: 森下 典子
  • 出版社/メーカー: 飛鳥新社
  • 発売日: 2002/01
  • メディア: 単行本


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