マッサージ効果あり 「ぬるい生活」 群ようこ [エッセイやマンガでリラックスしたいときに]
「ぬるい生活」 群ようこ 朝日新聞社 2006年
このエッセイ集は、『一冊の本』に2003年から2年間連載されたものをベースにしているのだが、
タイトルどおり、とにかく体の緊張がほぐれるある種マッサージ効果(?)がある作品に
しあがっている。
著者は1954年生まれなのであるが、50代になってからの体の変調が、
自分はもちろん、周囲の仲間達も含め、ことこまかく描かれている。
こまかいことは読んでいただくとして、とにかくこの一冊には笑わされた。
本人達にとってみれば「笑い事じゃないわよ!」と一喝されそうだが(間違いなくそうだろう)
その描写に何度か電車の中で一人吹きだし笑いをしてしまったところも何箇所かある。
これこそが群氏のエッセイの醍醐味である。
どんな悲劇も彼女の筆にかかればありゃりゃ的喜劇に変わってしまう。
年齢や環境の変化で、病名がはっきり付かないまでも不調になることは誰にでもある。
若い頃のように無理な仕事のしかたをすると次の日に起き上がれなくなるとか、
一晩寝れば治っていた風邪や体調不良が、何日たってもよくならないとか。
きっと、それなりの年齢になれば、誰にでも思い当たるところがあるに違いない。
ただ、そういう自分の加齢に対する気持ちの持ち方、対処のしかたは千差万別で、
いろんなものにすがってみたりする場合もあるのだろうが、
著者はなるべく自分の体自体に耳を傾けようとするところが共感できる。
友人たちの極端なアプローチにおどろいたり、おののいたり、爆笑したりしながらも、
誰にでも訪れる「老い」というもの、それに伴う体と心の変化について、
同世代、そしてこれから40~50代を迎える人たちが読むと
共感あり、妙な安心感あり、と不思議にリラックスさせてもらえる一冊である。
ちなみに、猫好きの方にもお薦めである。
著者の愛猫もちょこちょこと登場し、その猫への思いも語られている。
今、自分の体力の低下や老いについて焦りを感じている方には、
ぜひこの「ぬるま湯体験」をしてみていただきたい。
年齢や体調、状況に応じて自分なりのペースダウンした生き方に
シフトしていくヒントが見つかるかもしれない。
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※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。
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