純愛ブームの萌芽 「天使の卵」 村上由佳 [人生や物事について考えたいときに]
「天使の卵」 村山由佳 集英社文庫 1996年
少し前に映画化されたこともあり、まだ読んでいなかった過去の話題作、
ということで読んでみた。
なんというか、これを読んで感激する人と逆に全く冷めてしまう人に別れるのではないか。
当方はどちらかというと後者であった。
もし20歳くらいの時に読んでいたらどうだろう?
それでも同じだったかもしれない。
主人公は浪人から芸大に合格する絵描きの卵。
そしてその彼が好きになるのは年上の精神科医。
しかし、彼の父は彼女のクランケであったが、一時帰宅している時に自殺、
彼女の妹は、彼の元彼女で、しかも彼を忘れられないでいる。
こんな設定で、最後は破綻する最後しか見えない。
その設定も、あまりに不幸が重なりすぎる。
しかし、この作品が著者のデビュー作として1994年に発刊したころには、
まさに純愛ブームの萌芽期であったろうし、そういう意味ではシンボル的な作品と
なったのであろう。
今読むと昔の「君の名は」ではないけれど、少々不幸と偶然が重なりすぎ、
不自然な感じがする。
愛することの純粋さよりも、その作為的な重なりが非常に気になる。
それは私が年をとったせいなのか、読み手の嗜好なのか。
いずれにしても、とりあえず読んでみました・・・という感じになってしまった。
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※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。
本っていつ読むか?ってとこも大切なのかなって思います。
私も、この本はもっと若いときによんだら良かったのかなあなんて
おもってたところでした・・。
by 歩林 (2007-06-17 18:50)
歩林さんへ>
ナイス&ご来店ありがとうございます。
そうですか・・・歩林さんもそう思われましたか・・・。
今は1ヶ月、いや1週間に数え切れない数の本たちが発行され、
私が若い頃のようにいろいろな意味で生き残った作品だけが
発刊された頃とは様変わりしてしまいました。
自分が今求める作品と出会うのが難しいのは今も昔も同じのように
思えてきます。純愛、という意味では、近年「愛と死をみつめて」を
しっかり読めたことは収穫だったと思います。
作品は新作だけでなく、過去にも真実に近づくきっかけになるものが
溢れているんですね。
by ニライカナイ店主 (2007-06-19 00:40)