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本当の幸せとは何か 「父からの手紙」 小杉健治 [人生や物事について考えたいときに]


「父からの手紙」 小杉健治 光文社文庫 2006年

母と姉弟を残して他の女性とどこかへ消えた父。
そんな父から毎年誕生日ごとに届く一通の手紙からこの物語は始まる。

いなくなった父を心の底で許せない一方、
毎年送られてくる手紙は主人公の一人である女性をいつも支えている。

「人間の幸福は困難を乗り越える勇気を持つことにあるのです」という
二十歳のときに送られてきた言葉は、その後逆境に立たされる彼女を
何度も立ち上がらせる力となる。

その彼女はいろいろなしがらみからある男と結婚することになるのだが、
そこである事件が起こる。

一方、ある中年の男が刑務所を出所する。
男にはどうしてもつきとめたい謎があった。
それは彼が犯した罪と関係がありながら、思わぬ方向へと調べるにつれて展開していく。

ひとつの事件と謎が、どう関わっていくか・・・・


この作品はまさに小杉健治らしい作品といえる。

デビュー作の「原島弁護士の愛と悲しみ」以来、
小杉氏の作品は罪のうしろにある思い・・・愛情を描いている。

罪を犯すとき、自分の怒りや自分だけのために犯罪に走る者も多いだろう。
しかし、その後ろに深い他者に対する思いが横たわっているとき、
それを誰がどう裁くのか。
そのような境遇にあるとき、人はどうするべきなのか?
その道は本当に間違っていたといえるのか?

この作品はまさに家族という一見強い絆で結ばれているように見える関係のもろさ、
その一方でその絆を守るがために罪をも恐れない一途さ。
しかし、その一途な思いは本当の愛なのか?

そう、それを常に作者は問いかけているような気がするのだ。

この作品でも小さな罪、大きな罪、うらぎり、様々な人間模様が描かれている。
しかし、主人公である若い女性を最後に支えるのは父の言葉である。

「幸福は困難を乗り越える勇気を持つことにある」
その本当の意味を最後に彼女は知ることになる。
そして、この長編を読み終わった私達読者にもその思いは強く残るに違いない。

間違えてはいけない。
本当の幸せとは何か、ということを。

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※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。

父からの手紙

父からの手紙

  • 作者: 小杉 健治
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2006/03/14
  • メディア: 文庫


nice!(1)  コメント(4) 
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コメント 4

yworfutig

なんだかものすごく深そうな本ですね。
人生の何たるかが描かれていそうです。
by yworfutig (2007-06-20 00:15) 

おはなし村ゆめ

久しぶりです。こんにちは。お元気ですか?
これは、すごく読みたくなりました。
いま、また、本を読む時間が少ないのですが、
本当の幸せってって、最近、よく考えるので、この本を
読んでみたいとおもいます。
by おはなし村ゆめ (2007-06-20 00:19) 

ニライカナイ店主

クレマチスさんへ>
ご来店、いつもありがとうございます。
小杉氏はいつもチェックしているのですが、
最近の作品では出色です。お時間があればぜひ。
by ニライカナイ店主 (2007-06-20 18:32) 

ニライカナイ店主

おはなし村*ゆめさんへ>
ナイス&ご来店ありがとうございます。
ぜひお時間ができたらお読みになってみてください。
幸せって何なのかを読後にうーむと考えさせられる
一冊です。
by ニライカナイ店主 (2007-06-20 18:39) 

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