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本と共にあった子ども時代の風景 「遠い朝の本たち」須賀敦子 [人生や物事について考えたいときに]


「遠い朝の本たち」 須賀敦子 筑摩書房 2001年

翻訳家であり、エッセイストであった著者の、子ども時代から学生時代までの
本にまつわるエッセイ集である。

著者は文学作品については比較的めぐまれた環境にはあったが、
戦時中をはさんで大人たちの目があり、
家にある本をなんでも読めるというものではなかったようだ。

当時は大人の読む本、子どもに向いた本、というのがもっとはっきりしていて、
大人たちは子どもには子ども向きの本を読むように教育していたことがよくわかる。

一方、年上の兄弟がいて、多くの蔵書を持っているらしい近所の友人が
なかなかそれらの本を貸してくれないことに嫉妬するなど、
本好きの少女らしい気持ちや、当時の少女向けの雑誌にまつわる話なども描かれている。

著者はサンテグジュペリを愛読してきたのだが、
それは「星の王子さま」に始まるというよりも、空を飛ぶ、ということから始まっている。

「人間の土地」をはじめ、彼の著書に関する章は非常に印象的である。
「城砦」の中の、
「きみは人生に意義を求めているが、人生の意義とは自分自身になることだ」ということばに
須賀氏は深く感銘している。

現在、「星の王子さま」の翻訳や解釈が百花繚乱する空気の中、
サンテグジュペリという人を考えるにあたり、この章はヒントをくれるような気がする。

子ども時代を中心にした本にまつわる出来事・・・
関西から子ども時代に東京は麻布に引越し、
学校が変わったことで方言を意識せざるをえず、
愛していた庭と別れてきたこと等が
著者に大きな影響と悲しみを与えていたことなどがとつとつと語られている。

そして、どの出来事にもいつもそばに本があった。

そんなエッセイを読んでいると、自分も常にそばに本がある日々を送っていたいと思い、
自らの子ども時代からの本とのかかわりへも思いを馳せるのであった。

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※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。

遠い朝の本たち

遠い朝の本たち

  • 作者: 須賀 敦子
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2001/03
  • メディア: 文庫


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ニライカナイ店主

ねこばすさんへ>
いつもご来店&ナイスありがとうございます。
この本はちょっとクセもありますが、本の見方をまた
新しくしてくれる一冊でもあります。
どこかでであったらぜひ手に取ってみてくださいね。
by ニライカナイ店主 (2007-08-05 09:06) 

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