本当の仕事ってなんだろう?「Hello,CEO」 幸田真音 [人生や物事について考えたいときに]
「Hello,CEO」 幸田真音 光文社 2007年
まさか、この種の本で涙腺がゆるむとは思わなかった。
この作品は、大規模なリストラを始めて有能な人材から歯が欠けるように
姿を消していくある有名外資クレジット・カード会社で働く一人の若者が主役である。
やっと仕事が面白くなってきたところで、彼はリストラで崩れていく自分の職場を
目の当たりにし、ちょっとしたハプニングもあり、早期退職に応募、職を失う。
その後の展開は彼の尊敬していた元上司の誘いから始まり、あっという間に
新しいビジネスをはじめることになる。
その流れの速さは、まさに個性的な登場人物たちの感じた時の流れの速さと
同じなのかもしれない。
そして、幾度かの危機を乗り越え、彼らのビジネスは大きな夢に向かって走り始める。
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ややうまくいきすぎか?と思われるきらいはあるが、
ベンチャー・ビジネスを発案してから実際に漕ぎ出すまでの様子がリアルである。
それは、あとがきにもあるように、著者のリアルな実感によるところが大きい。
著者自身、大きな企業を病気のために去り、一度はベンチャーを
起こした経験があるという。
個人的に一番感情移入してしまったのは、
自分から一番遠い存在と思っていた登場人物のセリフであった。
大手広告会社で順調に階段を上っていく
主人公の恋人とも言える存在の女性が、
昇進を上司に打診されながらも毎日の忙しい日々の中で流されていく
今の仕事の仕方に疑問を感じ、苦しくなり、
我慢できずに主人公に胸の内を告白する部分である。
「誰かを喜ばせることができる。ありがとうって言って、感謝してもらえる。
それこそが、本当の仕事よ」
そして、自分が今、そういう「仕事」に飢えていることを訴える。
いい地位について、お金をたくさんもらって、その分派手に遊んで。
毎日、毎日忙しく仕事をこなしていっても、満足感が得られない。
疲弊していくだけの日々・・・
彼女は、自分の会社を休み、それまで否定的だった彼の
新しい夢への大きな一歩を手伝う、と申し出る。
夢、とは何なのだろう。
働き甲斐、とはありえるのだろうか。
仕事は、つまらないから仕事なのか。
彼らのような世界を体験することができる、
自分を誇れるような仕事をすることが、
今、この社会でできるのだろうか。
そんなことを読後に感じた作品であった。
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さて、この作品が今年最後の当店でのご紹介になります。
来年も心豊かな作品との出会いと、多くのお客様との出会いを期待しつつ、
年末のご挨拶をさせていただきます。
今年もご愛顧いただき、誠にありがとうございました。
新年もどうぞブック・カフェ、ニライカナイをよろしくお願い申し上げます。
皆様にとってすばらしい新年が訪れますよう心よりお祈りしております。
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※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。
ホシさんへ>
ご来店&ナイスありがとうございます。
やや青い内容ですが、スピード感と、その青さが心地良い作品です。
機会があったら、ぜひ手にしてみてください。
by ニライカナイ店主 (2008-01-09 19:28)