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久々の再会 「ラスト・イニング」あさのあつこ [人生や物事について考えたいときに]

「ラスト・イニング」 あさのあつこ 角川書店 2007年2月

もうあの少年たちと過ごした日々から遠ざかってしまっていたと思っていたけれど。
読み始めてみれば、すぐに引き戻され、またあの空気の中に
自分も立ち会っているような気がしてしまう。

それが「バッテリー」シリーズの特徴であり、魅力でもあるのだろう。

この作品の中では、あの最後の試合と、その後の彼らが描かれている。

それも、主人公であった巧と豪の周辺にいた人物を中心に。
あの試合で、相手チームのメンバーはどう感じていたのか、
その後、彼らはどうしているのか。そして、どうしようとしているのか。

その描写はこれでもか、というほどその人物の影を濃く映し出している。
そうだ、その人物そのもの、というよりもその影、なのだ。
「バッテリー」シリーズで描かれてきた手法の一つである、
その人物の影の部分を描く(一般的には内面、というのかもしれないが)方法が
この「ラスト・イニング」では特に駆使されているように思える。

中学生。
大人なのか、まだ子供なのか。
そんなことはどうでもいいのかもしれない。
なぜなら、その世代だったときに、
「自分は子供だ」などと遠慮した記憶のある方は
どちらかといえば少ないのではないか。

生きているから、打ち込むものがあるから、求めるものがあるから。
失うものなど考えもせず、いや、失うものなどわからないほど
新たに出会うものが大きすぎて、多すぎて、前しか見えない時代がある。

そんな時代を思い出しつつ、少しは今の自分もそんな風に生きても
いいのではないか、と思った読後であった。

                 *****

新年最初の開店です。

今年ものんびりペースのカフェではありますが、
皆様と共においしいコーヒーを片手に、味のある本と出合っていきたいと
願っております。

どうぞ今年もよろしくお付き合いください。

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※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。

ラスト・イニング

ラスト・イニング

  • 作者: あさの あつこ
  • 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
  • 発売日: 2007/02
  • メディア: 単行本


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コメント 2

春日 淳樹

おじゃましますv
あさの作品は物語の出来事や成り行きよりも、
登場人物の心の動きを主に書いているところが引き込まれますね。
結末を書いてめでたしめでたし・・・で終わらない、
現在進行形の少年たちの姿が好きですv

今年も寄らせていただきますv
宜しくお願い致しますv
by 春日 淳樹 (2008-01-09 22:42) 

ニライカナイ店主

春日さんへ>
ナイス&ご来店ありがとうございます。
なるほど。現在進行形・・・確かにそういえますね。まだ今もずっと
続いているような、続いていくような。
またこれからもお立ち寄りください。お待ちしております。

はっこうさん>
ナイス&ご来店ありがとうございます。また今年もお時間がありましたら
お立ち寄りください。よろしくお願いします。
by ニライカナイ店主 (2008-01-10 20:03) 

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